最強の大蛇に転生した僕は今日も人をのみこむ
池田大陸
第1話 ヌメタロー
多分僕は元人間だった。そして今は大蛇になっている。
「うおおおおーーーー待てええええーーーー」
――シュルシュルシュル。
僕は今、森の中で魔術師の女の子を追いかけている。もちろん飲み込むためにだ。
しかし誤解しないでもらいたい。僕はこの子に攻撃したいわけではない、むしろ逆だ。
「イヤァァァァァ!やっぱり怖いいい」
僕はすぐに女の子に追いつき大口を開けて――。
パクー。
頭からイッターーー!
女の子の腰辺りまで一口で一気に飲み込む僕。そのまま口を上に向け軽くハムっとしてやると簡単に女の子は口の中へと吸い込まれた。よし!準備完了だ。
さて、ここからだ。僕はこの身体から出る粘液と回復魔法を組み合わせる事により、より強力な回復力を得る事に成功していた。
魔法を使うことによって、僕の灰色の額に回復魔法の証である黄緑色の紋章が浮かび上がる!
まず僕の舌は根本から二股に分かれており、その先端は人間の指のように10本以上に分かれている。それらの舌を使って女の子の全身をくまなく舐め回し、回復魔法の魔力をブレンドさせた粘液で包むようにコーティングしていく。
ペロペロペロペロペロペロ――。
「やっ、あっ、あああっ……あっ……あふっんっ!!」
ふふふ。いいぞーこの子、全身ツルツルで舐め心地は最高だ!
僕の口内で激しくもんどり打つ魔術師の女の子。そして舌の動きと同時に回復魔法の魔力を口内に充満させることにより、そのヒーリング効果を数十倍にも高めてゆくのだ!
「ふむ。なかなかに豊満な身体をしているなこの子は、胸の大きさはここ数年で一番かもしれないぞ。ふふふ」
服の中に入念に舌を這わせ、女の子を回復させつつ僕本人もしっかり快感に浸ることができる。我ながら素晴らしいスキルだ!
――それから数分後、僕は女の子を口から出してあげるとその子は恍惚とした表情でハァハァと息を荒げながら僕の身体にもたれ掛かって離れなくなった。どんな女の子も飲み込んで回復させて吐き出した後は毎回こんな風に僕になびいてくれるのだ!
ちなみに「のみこむ」で使う口内粘液は速乾性でいつまでもベタつかないように工夫が凝らされている。その辺の気づかいもバッチリ!さすがは僕だね!
吐き出された女の子の身体からは体力と魔力が充実した証である、湯気のようなオーラが立ち上っていた!
「……ああ……。ヌメタローさん、あなたは最高ですー!」
そういう彼女はアルティーナという新人魔術師だ。
「ふふふ。だから言ったろアル。いざ『のみこむ』で回復させてあげようってなったら君、いきなり逃げ出すもんだから僕が追いかける羽目になったじゃないかー。まったくもう」
さて、現在大蛇である僕だが、僕には大蛇以前の記憶がないのだ。
でも僕には転生する以前は人間だったという確信がある。なぜそう思うのかというと、大蛇になる以前の記憶がない代わりに人の言葉が理解できて今みたいに話すことも出来るからだ。
それにしても僕は女の子ばかり追いかけてしまうな……。転生前はさぞかし性欲の強い人間だったことだろう。
ちなみにヌメタローというのは大蛇の僕に勝手に付けられた名前であり僕としては不本意だ。もっとかっこいい名前を付けて欲しかったよねー。
「おい蛇野郎!またいやらしい顔つきをしているな貴様!」
後ろからいきなり偉そうに文句を言う奴がいた。『女勇者』のサラだった。
もう一人の『戦士』バルガスのおっさんも腕を組みながらこちらを睨んでいる。くそう、なんか腹立つな……。
「このパーティーにもはやお前はいらない!本日をもって追放する!!」
え!?いきなりなんか酷いことを言われてしまった……。
「え、な、何?追放?なんでなんで?」
僕は当然のように理由を聞く。
サラは語り出した。
「まずお前の全てが気持ち悪い!見た目も行動も考え方も」
「き、気持ち悪い!?」
いきなりなんて失礼な事を言うんだこの女は。まったく!
ここでそれまで黙っていたアルティーナが口をはさんだ。
「ヌメタローさんは気持ち悪くありません!私、さっきすっごく気持ちよかったですっ!」
うおー。いいぞアルティーナ!もっと言ってやって!!
「お、おい、アルティーナ。お、お前は気持ち良ければそれで良いのか!?」
バルガスの奴がアルを非難している。
「はい!気持ちよさが全てです。私もパーティーを抜けてこのヌメタローさんについて行きます!!」
「ぬぅー……なんと淫らな女だ!」
ふふふ、バルガスよ、君にアルティーナの良さは分かるまい。
女勇者のサラはここで俺の欠点を指摘した。
「大体、お前は強力な回復魔法を使うヒーラー(回復役)としてこのパーティ『ホーリー』に入ったハズ、なのに女しか回復させないとはどういう事だ!?」
「え?……いや、だって男を『のみこむ』なんて嫌すぎるし……。だから代わりに『まきつく』でちゃんと回復させてるじゃないか!基本的に同じ回復粘液を使った回復魔法だし、やり方が違うだけさ。何か問題あるかい?」
僕の反論に対しサラはさらに言い返してきた。
「問題あるわ!『まきつく』だと『のみこむ』の半分しか回復しないだろうが!盾役を担う『戦士』のバルガスが一番負傷しやすいのはお前も知ってるハズだ!蛇のくせに人間を選り好みするな!この役立たずが!!」
「そうだ!てめえの『まきつく』のお陰で回復と同時に毎回ダメージまで食らっちまうじゃねえか!?このクソ蛇が~!大体下等な生き物の分際で依頼の報酬でタバコは吸うわビールは飲むわ……生意気なんだよてめえはよーー!!」
ふー、随分な言われようだなあ。でも僕は男をペロペロするのだけは絶対に嫌なのだ!想像してみてほしい。汗まみれで暑苦しいマッチョなおっさんと可愛らしい女の子、どっちを口内に入れてペロペロしたいと思う?言うまでもないよね?
「まあそういうわけでヌメタローよ。明日からお前には一切報酬は出ない。分かったらさっさとどこかえ消えてしまえ!」
サラは腕を組み僕にあざ笑うような視線を向けている。……なるほどね。しかしこのパーティでしばらく飯を食った思い出がないこともないし、一つ聞いておいてあげよう。
「僕を追放するのは良いとして君達は回復役の僕の抜けた穴をどうするつもりなんだい?」
サラはフッと鼻で笑い高らかに言った。
「使えないお前の代わりに今度アメリアという強力な魔道士が加入してくれるんだ。彼女は将来の大魔道士とも目される人物で攻撃魔法から回復魔法まで難なく使いこなし、多くのスキルも持っている」
アメリア!?なんか聞いたことあるぞ。なんでもこのロッコロール王国一の優秀な魔道士だとか。
そしてサラはこう続けた。
「私は以前からアメリアをスカウトしようと粘り強く接触していたんだ。そして昨日、初めてこのホーリーに加入すると言ってくれた。なんでもそれまで加入をためらっていた原因はお前らしいぞ」
「ええー!?どゆこと?」
「アメリアは一度私達を見たことがあったらしい、が!大蛇のお前の姿が恐ろしすぎて加入を止めたとのことだ。彼女は蛇だけは大の苦手で近くに蛇がいると魔法どころじゃなくなるらしい」
「なんだよ!やっぱりお前が全ての元凶じゃねえか!もっと早く追い出しときゃよかったぜ。なあサラ?」
「ああ」
バルガスもサラに加勢した。くそう……こいつら……。
「まあそういうわけだ。お前はどっかの山で鹿でも食ってろ!はっはっはー」
……僕は二人で山を降りていく奴らの後ろ姿を眺めながら、スキル【慧眼】を発動した。
[サラ]
種族:人間
体力:223
魔力:96
攻撃力:285
防御力:126
スキル:【瞬閃】
[バルガス]
種族:人間
体力:470
魔力:31
攻撃力:171
防御力:369
スキル:【体当たり】
ふむ、やはり僕が加入した時より大分成長している。個人レベルで見ると優秀なんだよなアイツら。
「……そんな。いくらヌメタローさんが女好きでわがままで人間じゃないからってあの人達ヒドくないですか?今まで一緒に戦って来たんでしょ?なのにいきなり追放だなんて……」
アルティーナは二人の行動に不満を抱いているようだ。君は良いやつだな。
「まあでも正解かも知れないね、コレで」
「えっ?」
驚くアルティーナ、そしてよく分からないといった顔をする。
実は僕は常日頃から感じているのだが、僕の体内には強力で恐ろしい力が潜んでいる。
それはこの大蛇の体が元々秘めていたものだろう。僕はいつもその力を開放してしまわないように抑えている。この力は一国を崩壊させるレベルにある――そんな予感さえ感じさせるほどにこの蛇が持つ力のポテンシャルはえげつないのだ。
だからサラ達の取った僕を追放するという行為はある種正しいといえる。
――と、まあそんなことはどうでもよく、ペロペロ!
「――!!あううっ……あはっ、んっ」
僕はアルティーナの耳元に舌で不意打ちのペロペロをかますと彼女は本当に気持ちよさそうに喘いだ。
「もぉーヌメタローさんてばー……」
そう言いながら僕に抱きついてくるアルティーナ。うふふ、まあいいや、今は面白い女の子も付いてきてくれるし。しばらく人生……いや蛇生を楽しむぞ!
[ヌメタロー]
種族:???
体力:816747
魔力:987345
攻撃力:498724
防御力:138789
スキル:【のみこむ】【まきつく】【慧眼】……他。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます