13:第十三話:始まりの始まり
森をひた歩き、屋敷にたどり着く。
結局ここは庭なのだろうか。
宇宙船の横を通り過ぎた辺りで彼女が振り向き口を開く。
「貴様は少し休んでおれ。
出来たら呼ぶからの」
いや、さすがに何も手伝わないというのもな。
結局私が彼女からの荷物を預かった時間はとても短い。
「いや、さすがに手伝わないのは……なんというのか」
私が言葉に詰まっていると彼女が口を開く。
「何を言っておる。
貴様先ほどまで息も絶え絶えだったであろう?」
ぐうの音も出ない。
もはや、ぐの字すら捻り出せないほどに体は疲弊しきっている。
「じゃから休んでおれ」
「あ、ああ」
私が渋々承諾すると彼女は一つ笑った。
さて、場所は移って宇宙船。
私の目的は異世界の証明についてだ。
異世界についての資料を現世に持ち帰り、我々の研究が、いや彼らの研究が無意味なものではなかったのだと証明しなければならない。
そのためには資料作成か。
……そもそも何が必要なのだろうか。
え?お前学者だろって?研究員だろって?
聞いて驚け。
何が書いたことがあるかと言われれば小説紛いの駄文である。
ふむ、小説か。
なるほど。
私の体験を小説として書くとしよう。
もう少しちゃんとしたものはほかの人間に任せることにする。
とにも書くにも筆記具が必要だな。
私は船内に一つは転がっているだろうことを信じて探索を始める。
さてさて宇宙船には乗組員用の個室が四つ存在する。
噂によれば一つは私のものらしい。
とりあえずそこから当たってみることにする。
私の部屋。
一体奴等が何を考えていたのかは知らないが、そこには私の自室が再現されていた。
無論私がこの部屋を作ったわけではない。
そしてその中にとても馴染みのある物体が置かれていた。
この世界でも世話になるとしようか。
私が使う、筆記具の一つだ。
パソコンを起動するとそのまま椅子を引き机に向かう。
私がキーボードを叩いていくと、パソコンにはまた一つとるにたらない物語が紡がれていく。
その物語はこのように始まるのだ。
どうしようもない一介の無能が吸血鬼と出会い、異世界について書き記していく。
さて、では始めるとしよう。
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