龍脈浄化作戦 その2

10分ほど待つと職人たちがぞろぞろと集まりだした。まだ歳若い職人はひーこらいいながらおおきな水槽を手分けして運んでいる。


「さて、嬢ちゃん。集まったが、これからどうするんだい?」


「まずは結界の外まで行きたいのだけど、どのあたりから結界がなくなるのか教えてもらえますか?」


「ん? そりゃあ、こっから3メルクぐらい先だな」


1メルクは約1キロ、大体3キロ先らしい。私はこの世界に来て、王子がいう結界という存在を感知できない。 何か見るのに特別な才能がいるものらしい。龍脈をみるのも同様だ。

私自身は、自身の経験と魔道具で判断できるが、直接見るには竜眼と呼ばれる特殊な眼をもった魔法少女しか見ることはできなかった。


私たちは森を突っ切る街道をそのまま歩いて進んだ。

その間に水槽を運ぶ若手職人はわたしをひどく睨んでいた。ごめんね!


そして街道を真横に一本線が入った場所につく。どうやら、結界との境界線のようだ。

私は早速、境界の外に出て、実演を開始する。


「えーまず、いまからここに沼を作ります。 あぶないのでさがっててください」


「ちょっとねーちゃん! いきなり何言ってやがる!」


かなり焦った様子の老職人。私はそれを無視して手に魔力の塊を作り出す。


「えー今、ここに魔力の塊を作りました。 特になにもおきませんね?」


そういうと職人たちは皆、一様に頷く。


「では今からこの球を地中に埋め込みます! 見ててください!」


そういって私は地中に押し込むように地面に手を当てながら、徐々に体重をかけていく。

すると地面は手のひらを中心に少しずつ、黒く変色していく。

私は魔力の球をはじけさせない様に5分ほど、その態勢をキープした。


――5分後。

そこには直径5cmほどの沼が完成していた。

ぐずぐずと音をたて、異臭を放つ。

手がべちゃべちゃだ。気持ちわるい。


「こりゃあ……ほんとに作っちまったのか……」


私は手を水で拭いながら答える。


「まぁ、ある程度魔力を圧縮して留めれば簡単に作れますよ。結界の外なら」


「いや……。簡単に作られちゃ困るんだが……。 それであんたが簡単に作れるのと、さっきの話。どういう関係があるんだい?」


「あ、じゃあ話を戻す前にこれ消しちゃいますね! はい、ずどん!」


私は手から小さな魔力砲を発して先ほど作った沼を吹き飛ばす。

簡単に消し飛ばしたことに、更におどかれた。

また、やってしまった。そんな気がした。


「それでですね。 今は地中に魔力の塊を埋めたんです。弾けない様に、すると段々と悪い気っていえばいいんですかね? それを吸着して、地面に悪影響をあたえていくんです。それが沼の正体。 ここまでは大丈夫でしょうか?」


「いや問題ねぇ。 続けてくれ」


「それで地脈っていうのは、魔力の流れが地中深くにあります。 その流れが何らかによって阻害されてるんですね。すると、今実演したことが地中深くから始まっていく。 そして地表まで出てきたのが沼になるってわけです」


「うーん。そりゃ、その地脈があるって前提だろ? 大気中の魔力が

集まってできてたらどうなるんだ?」


「あー実演します? 怪我するから何かに捕まっててもらえますか?」


すると蜘蛛の子を散らすように職人たちは森の木々に捕まる。

私はそれを確認すると、魔力を右手に集めだした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る