穢れし森へ

王城が騒がしいまま一晩が明けた。


王子の私室で休ませていただいた私は、体調が復調していた。

グナーデ王子は朝食を部屋に用意してくれ、それをいただく。

その後彼の侍女たちに私は服を着替えさせられた。

その間グナーデ王子はずっと別の場所にいたらしい。


彼は二人の供を連れ、部屋に戻ってきたのは日が高くなってからのことだった。


「ヒジリ様、森へ様子を見に行かれるとのことでしたの彼らを供に連れて行ってください」


一人は黒髪の隻眼の偉丈夫。壮年期に差し掛かろうかという年齢のようだが、不思議と色気のある人物で名をグレイといった。

もう一人は、粗暴な印象の大男。歳は私と同じぐらいだろうか? 声が大きくてうるさいが、グレイやグナーデとは毛色の違う色男だった。ガーランドというそうだ。


「彼女が昨日の?」


グレイはどうやら、あの場にいたようだ。

昨日とは似ても似つかない私の姿に、怪訝な表情を見せる。


「あの王をぶん殴ったっていうには随分覇気のねぇ女だな」


「やめろ、グレイ、ガーランド。ヒジリ様はわざわざ我らの為に来たくもないこの世界に連れてこられたのだ。無礼は許さん」


グナーデ王子が二人を窘めると素直に引き下がる二人。

どうやら、彼らは王子の腹心のようだ。


「まぁ……とりあえず。 はやく現場を見に行きましょう!」


私はあまり畏まられてもむず痒いため、出発を促したのだ。


現場には馬車でいくらしい。

初めての経験にワクワクとしたが、数分で後悔することになる。


(うわ……すっごい揺れる。また吐きそう……)


現場に着くころにはぐったりとした様子の私に二人は言外に、無駄な時間を使わせるなと言った言葉が見て取れる。

私が聖女ではないと知っているのだ。

どうにかなるなどと露ほどにも思っていないのだろう。

私自身も何ができるかわからないのだ。

ならば、二人はそれ以上に私に対して懐疑的な目を向けるのは仕方がないことだと思った。

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