王子との出会い

私は気が付くと、ふかふかのベッドに寝ていた。

全然記憶がない。

私が起きたことに気が付くと、ベッドの横で本を読んでいた男が私に声を掛けてきた。その男は笑顔が眩しい金髪の青年だった。


「あぁ、起きましたかおねぇさん。 父が無礼を働いたようで申し訳ありません……」


おねぇさんという呼び方は私の見た目に精一杯配慮したのだろう。

私の身体は今29歳のくたびれOLだ。

皺の隠し切れない目元に、くたびれたスーツ姿は流石にお嬢さんと言われる歳ではない。

そういえば父といったな。

このキラキラな王子さまオーラを纏った青年は金色の髪に、青緑の瞳が美しかった。彼はもしかしなくてもこの国の王子なのだろう。私はそれに気づき顔が青くなる。


その表情に王子は何を考えているのか、すぐに気づく。


「あぁ大丈夫ですよ。 誰もあなたが、みんなが探してる偽聖女なんて気づいてませんから、今は休んでください」


「偽聖女……。 えっとあなたはこの国の王子様なんですよね? 私を捕まえなくていいんですか?」


「立場としては捕まえるべきなんでしょうが、父にはいい薬でしょう。元々私は反対だったのです。異世界の聖女に無理やり助力を頼むなど……」


その顔には忸怩たる思いが浮かんでいる。


「やっぱりこれ一方通行なんですか?」


「すいません」


王子は多くは語らず、言い訳するつもりはないようだ。


「まぁ帰っても、つらい毎日が待っているだけですから、気にしないでください。王子様」


「しかしご家族や、恋人がいるでしょう!」


「家族はいません。 恋人? ……はは、なんですかそれ?」


その言葉に微妙な沈黙が流れる。

はは、悲しくなってきた。


「あぁ、そういえば、自己紹介を忘れていました。 私は、グナーデ・ゼリア・ハインリヒと申します。この国の第二王子です。 ご挨拶が遅れ申し訳ありません」


微妙な空気を振り払うように王子は明るく挨拶をする。

まだ10代だろうに、しっかりしている。


私も「手島 聖」と簡単に挨拶する。

私はもう少し詳しく状況を聞いてみることにした。

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