魔法少女は逃げ出した

「あの? 聖女様……、それはどういう……?」


王はうろたえながらも私に聞いてくる。


「いや、私癒しとかそういうの一切使えませんし……。出来ることっていったら、ほんと魔力砲をズドン! って撃つだけです。 どっちかというと癒すより破壊が得意です」


「おい! 魔術師たち! どういうことだ!」


突然豹変する王様。

私はびくりとして、肩をすくませる。


人がよさそうな顔が豹変するのは正直怖い。


二人ほど白い服を着た魔魔術師らしき人が出てくる。

その二人は跪き、奏上した。


「より強き魔力をということで、範囲内で一番強い魔力の者をよびだしたのですが……、癒しの力がないとは思わず」


「っく……、それで? もう一度聖女様を探すにはどのくらいかかるのだ?」


「おそらく三年は掛かるかと……」


「ふざけるな! その間にこの国は亡びるぞ!」


間違えて呼んだことを叱責する王、しかし叱るなら私が帰ってからにしてほしい。


「えーと……、私は関係ないってことで、帰してもらえるんですよね?」


「なんだ貴様? まだいたのか? ふん! 使えん奴め! おいお前たちだれかこいつを王城からつまみだせ!」


「は?」


聖女じゃないなら私は用済みらしい。

帰してくれる雰囲気が一切ない。

私はせっかくの晩酌を邪魔された挙句、王城から捨てられるらしい。


「ふざけんな! このク〇野郎!」


私は今まで数多くの難敵を屠ったマジカルゴールデンライト!(ただの右ストレート)を王様に放ち、部屋から逃げ出した。

後ろからは「逃がすな!」と怒声が聞こえる。

魔法少女の身体能力を甘く見てもらっては困る。

あとで筋肉痛になることに目をつぶれば100メートル3秒台で走れる健脚ぶりなのだ。

しかし、急に走ったことで私は胃の中に酒を入れていた事を思い出す。


(うぷ……気持ちわる……)


変身が解けてしまった。

私はよろよろと、少しでも離れようと歩くが、視界が歪み足元がおぼつかない。

ていうか吐きそう。


私は壁に寄りかかりながらも懸命に進むしかし、もう限界だ。

倒れそうになる。

すると横のドアが急に空いて私の身体を抱きとめる気配がある。

ムスクの香りがした。

そして私は気を失ったのだった。


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