山笑う
香久山 ゆみ
プロローグ
*
「ちょお、待ってぇ」
はじめにはしゃぎすぎた私はもうへとへと。彼の長い脚にはついていけない。音を上げる私をちらと振り返る。生い茂る木々の影になってその表情はよく見えない。
追いつかない。
どうして必ず下るのに、わざわざ上っていくのか。そう訊いた時、彼は何て答えたのだったか。山登りなんてわけがわからない。
*
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