ご奉仕、ご奉仕・にゃんこ族のメイド
霜花 桔梗
第1話 メイドのお仕事を始めるにゃんこ族
ここは古都サンディン、私は旅のにゃんこ族のメイルです。長い旅を終えて故郷のサンディンに着きました。そう、旅費が尽きたのです。
ああああ、仕事を探さないと……。
私は駅の掲示板を見る事にしました。
『住み込みのお仕事!貴族のメイドです。初めての方、歓迎します』
おおおお、これはなかなかの求人です。私は住所を頼りにしてお仕事現場に向かいます。そこに有ったのは豪華なお屋敷です。
こんな所で働けるの?
正門から堂々と入って行くと。警備の兵士に止められます。
「あ、あ、あのーメイドの求人を見て来たのですが」
「これは失礼、今、メイド部長さんを呼びます」
これはわくわくモノだぞ。すると、背の高いメイド服の女性が現れます。
「私はにゃんこ族ですが、ここで働きたいのです」
「ま、ストレートな方、いいでしょう。採用です」
オシ、お仕事ゲットだぜ!これで、このお屋敷のメイドです。
私は暗い廊下を歩くと不意に疑問を覚える。
「メイド部長さん、何で旅人の私が簡単な面接で採用なのですか?」
「それはあなたがにゃんこ族だからよ。昔からにゃんこ族は幸福を呼ぶ民と言われているわ」
いやーホントの事だけど照れるな。私の顔がふにゃけていると。
「本当の理由は御主人様が孤独なお方なのですから、小さくして両親を失い。今は軟禁状態、心を閉ざした、ご主人様にはにゃんこ族のあなたが必要なのです」
へー権力者も大変だな。旅人の私には解らない世界だ……。
メイド部長の話に、口をパクパクさせていると。
「着きました、先ずはお風呂です。その後、清潔な衣装を用意します」
確かにお風呂など何カ月ぶりだろう。旅先ではシャワーで済ましていたからな。そして、私は服を脱ぐとシャンプーから始める。長いブロンドの髪はかなり痛んでいた。シャンプーを洗い流すと体を洗って。湯舟に浸かる。
「あー生き返るわー」
私がリラックスしていると。誰か入って来る。
「あら、先客がいた。貴女は誰?」
「私はにゃんこ族のメイルです」
「へー私はここで働いているメイドでラメです。貴女が噂のにゃんこ族ね、試しに猫の姿に成って下さいな」
「ダ、ダメです。猫の姿では水が苦手なのです」
「ゴ、ゴメンなさい……」
「謝らないで、後で沢山、猫の姿に成ります」
「ありがとう、可愛がってあげる」
何やら百合百合な展開です。
そう、にゃんこ族は人の姿と猫の姿を自由に切り替える事が出来るのです。
その後、メイド服に着替えて。お仕事の説明を受けます。私の仕事はご主人様におやつを届ける係と御主人様の室内の掃除です。メイドのお仕事は未経験なので簡単なモノあった。
そして、重要な任務が御主人様の日記帖を政府高官に渡す事です。それは御主人様が政治活動をしていない事を証拠する為に提出するのです。
うえー、今日は健康診断に契約書のサインなど疲れました。
私が疲れ果てて、中庭のベンチにたどり着き休んでいると。三毛猫の姿になります。日差しが差し込み暖かくなり眠りに落ちると……。
誰かがナデナデしてきます。
「にゃん?」
「起こしてしまったかな?」
それは御主人様でした。私は急いで人の姿に成ります。
「ご、御主人様、失礼しました」
「かまわない、にゃんこ族には初めて会ったから珍しくてね」
「は、はい」
「それより、猫の姿で膝に入ってくれないか?」
それはにゃんこ族だから出来る願い事であった。私は猫の姿に成ると御主人様の膝に入る。温かくて気持ちが良い。再び眠りに落ちると平和な時間が過ぎて行った。
「君は旅人さんだってね、籠の鳥の僕には想像もつかない事だ」
微睡の中で御主人様が語りかけてくる。儚いその声は今にも消えてしまいそうであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます