【短編】幼い頃にエッチな話で仲良くなった女友達と再会する話

キョウキョウ

短編

「うわぁ、懐かしいな」


 久しぶりに帰ってきた故郷を歩いていると、その景色を見て色々な思い出が蘇ってきた。思わず、感傷に浸ってしまう。


 都会に比べて、家の数が少なくて緑が多い。自然が豊かな田舎だった。


 男子学校に居た頃は、外に出るのも制限されていた。危ないから、外出するのに色々な手続きと準備が必要だった。そのため、今のように歩くことすら難しかった。だけど、今の僕は自由だ。自由を満喫して、楽しんでいる。


 これから向かう先は、幼い頃に仲良くなった女友達の家。彼女と、久しぶりに会うために帰ってきた。早く、会いたい。


 僕のこと、覚えてくれているかな。忘れているかも。それが少しだけ心配だった。男子学校に通うため、僕は故郷を離れる必要があった。ずっと故郷で過ごすつもりでいた僕は、男子学校の入学を拒否できないことを知らなかった。男性なら、強制的に入学することになるらしい。そんなルールがあったなんて。


 それで少しゴタゴタしてしまい、友達とお別れするタイミングを逃してしまって、離れ離れになった。だから、彼女は怒っているかも。なんで、お別れを言わなかったのかと。そしたら、誠心誠意謝ろう。




 彼女の住んでいた一軒家の前まで歩いて、ドアの前で立ち止まった。彼女は居るかな。ドキドキと心臓の鼓動が大きくなる。緊張してきた。僕は意を決して、インターホンを押す。


 反応がない。家には、居ないのかな。


「すみませーん」


 家の中に呼びかけてみるが、返事はなかった。やっぱり、居ないのか。僕は困ったなと、頭をかきながら考える。


 どうしよう。出直そうかな。いや、ここで待つか。でも、すぐに帰ってくるのか、わからないし。そんな事を考えていると、誰かに話しかけられた。


「あ、あの……」

「ん?」


 声の聞こえた方へ顔を向けると、美女が立っていた。見覚えがある。もしかして、彼女は。


「タカちゃん?」

「え?」

貴乃たかのちゃん、だよね?」

「あ、はい。私は貴乃、ですが……。貴方は」


 やっぱり、そうだ! 幼い頃から可愛かった彼女は、成長して美人になっていた。顔を見て、すぐにわかった。嬉しくなって、話しかける。


「僕だよ、僕! かおるだよ。覚えていない?」

「あ、え? えっと? え!?」


 この反応は、どっちだろう。忘れられていたら悲しいけれど。連絡もしないで急に会いに来たので、迷惑だったかもしれない。とても混乱して、慌てているし。


 彼女が落ち着くのを待つ。そして、口を開いた。


「もしかして、かーちゃん?」

「そう! 覚えてる?」

「う、うん。覚えてる、けど」

「ほんとに? 嬉しいッ!」


 ちょっと独特な呼び方のあだ名で僕を呼ぶ貴ちゃん。懐かしい呼び名に、テンションが上がった。嬉しくて、僕は彼女を抱きしめた。


「久しぶりッ!」

「ひゃ!? ひゃい」

「あ、ごめん! 嬉しくって、つい」

「あ、え、いや、えっと、いや、じゃなくて、もっと、その、大丈夫だから」

「ありがとう!」


 急に抱きつくなんて、セクハラになってしまうな。僕は慌てて離れて、謝罪する。でも、彼女は優しく許してくれた。


 だけど、本当に久しぶりだ。抱きつきたくなる気持ちも理解してほしい。不本意な不本意な別れ方だったから、ずっと会いたくて会いたくて仕方なかったから。


 再会できて、本当に嬉しい。




***




「ん?」


 彼を見かけたのは、偶然だった。違和感があったから、すぐ目に留まった。こんな田舎に、あんなに若くて可愛い男の子が居るなんて、不自然すぎる。しかも、1人で歩いているなんて、危なすぎるでしょ。


 近くに、同行する女の人は居ないのか。見当たらない。本当に、1人で歩いているのかな。


 何かの罠か。話しかけたら、怖い女の人が出てきて言いがかりをつけてくるとか。でも、こんな田舎で? 変ね。


 もしも、本当に1人で歩いているのだとしたら。危機感もなく、無防備で歩いているのだとしたら。変な女に話しかけられて、連れ去られるかも。


 心配になった私は、彼の後をつける。これは、ストーカーなんかじゃなくて心配だから。これ以上は近寄らず、声をかけなければ問題はないはず。


 でも、本当に可愛い。美しい黒髪で、背も小さく、華奢で。肌も綺麗で、透き通るぐらい白くて。だけど、健康そう。しっかりと歩いている姿は、凛とした感じで素敵だった。誰が見ても、見惚れてしまいそうな美男子。


 どこに行こうとしているのかな。周りをキョロキョロと見ているけど、道に迷っている感じはない。どんどん進んでいく。そして、私のよく知る道を歩いていた。


 この先って、もしかして。なんとなく、予感がした。


 そして、私の住んでいる家に前で立ち止まる。どうして、ここに。疑問に思って見ていると、インターホンを押した。間違いなく、私の住んでいる家に用がある。


 でも、あんな可愛い男の子が何の用事で我が家に? その理由が思いつかなくて、しばらく眺めていた。


 あ。家の中に呼びかけている。可愛い男の子の声。もっと聞きたい。こんな田舎じゃ、男の子の声なんてテレビやラジオで聞くしかない。生の声は、貴重なのだから。


 私は耳を澄ませて、彼の声を聞き取ろうと集中した。あ、ダメだ。黙ってしまった。そして、困っている。家に誰も居ないから、どうしようか考えているみたい。


 私も、どうしよう。話しかけるか。でも、女が急に話しかけたら怖がるかも。だけど、私の家に用事があるみたいだし。母親に用事があるのか。でも、あんな男の子と知り合いなんて聞いたことがない。羨ましい。いや、今はそんなことは関係なくて。




 私は、覚悟を決める。話しかけて逃げられたら、警察に自首しよう。それぐらいの覚悟を。大丈夫。家に用事があるみたいだから、関係あるはず。怖がって、逃げたりしないで。


 そう願いながら、彼に声をかけた。


「あ、あの……」

「ん?」


 よかった。怖がられたりしなくて。でも、顔をじっくり見られている。恥ずかしいな。でも、私も彼の顔を凝視する。やっぱり可愛い。テレビや雑誌とは違う。こんなリアルな男の子を見られるなんて。


「タカちゃん?」

「え?」


 あだ名を呼ばれた。どうして、知っているのか。それと同時に、男の子にあだ名を呼ばれて感激していた。感動して、涙が出そう。


貴乃たかのちゃん、だよね?」

「あ、はい。私は貴乃、ですが……。貴方は」


 もう一度、確認される。今度は名前を。だから、どうして知っているのだろうか。私は疑問に思った。男の子の知り合いなんて、1人も居ない。1人でも居たら、絶対に覚えているはず。忘れるわけがない。でも私には、目の前の男の子を知らない。


「僕だよ、僕! かおるだよ。覚えていない?」

「あ、え? えっと? え!?」


 かおる。カオル。そんな名前を聞いても、ピンとこない。だけど、別のセンサーが察知した。ある日突然、居なくなった友人の名前。今でも覚えている。でも彼女は、女友達だったはず。


「もしかして、かーちゃん?」

「そう! 覚えてる?」

「う、うん。覚えてる、けど」

「ほんとに? 嬉しいッ!」


 自分がかーちゃんであることを認めた男の子。いやいや、そんな。でも、だって。彼女は女の子だったはず。それが、どうして男の子に? よく見ると、かーちゃんの面影があるような。彼女も、男の子のように美しい顔だったかも。いやいや、でも。そんなはずは。


 気付くと、彼の顔が間近に迫っていた。なんで、どうして!?


「っ!?」

「あ、ごめん! 嬉しくって、つい」


 抱きつかれた。男の子に。離れてしまった。うわ。もっと堪能したかった。男の子にギュッと抱きつかれたなんて、一生の思い出になるのに。あー、もったいない。


 それなのに、彼は申し訳無さそうな表情を浮かべていた。むしろ、私のほうが謝るべきなのに。だから、そんな悲しい顔をしないで。私は、大丈夫だから。


「あ、え、いや、えっと、いや、じゃなくて、もっと、その、大丈夫だから」

「ありがとう!」


 うわ。変な声を出してしまった。気持ち悪いと思われていないかな。でも、笑顔になった彼は素敵だった。ずっと見ていたい。


「あー、じゃあ、えっと。立ち話もなんだから、家に上がっていく?」


 言ってしまった後に、ヤバいと思った。こんなナンパみたいな言葉で家に誘うなんて、下心ありだと思われていないか。嫌われないか。


 いや、もちろん。ちょっとは下心があるんだけど。だって、男の子と話せる機会なんて貴重すぎるから。ここで別れたら、次に会えるのはいつになるのか。絶対に離したくない。


「え? いいの? お邪魔して」

「もちろん、いいよ」

「じゃあ、お邪魔しようかな」


 そう言って、家の中に入る私の後についてきて、一緒に家の中に入った。ちょっと無防備すぎるんじゃないか。女に誘われて家の中に入るなんて。まだ、信じられない気持ちが続いている。私の暮らしている家の中に、男の子がいるなんて。


 どういうこと。


「あ」

「え? あっ!?」


 私の部屋まで案内した。すると、ベッドの上に一冊の雑誌が。


 終わった。私が愛用しているエロ本を見られてしまった。絶対、軽蔑される。もうダメだ。終わりだ。


 しかし、私の予想と違って、別の反応が返ってきた。


「懐かしい」

「……へ?」


 笑顔で雑誌を手に取る。それを、ペラペラとめくって楽しそうだ。男の子が、私のエロ本を読んでいる。しかも、私の部屋で。想像もしたことない光景。なぜか、それを見ていると興奮してきた。何だ、この気持ちは。


「昔、この雑誌を一緒に見てたよね」

「え?」

「覚えてない? あ、この人まだ現役なんだね。すごい」

「あ、えっと、え」


 かーちゃんとの思い出が蘇ってくる。確かに私は幼い頃、友達と一緒にエロ本を読んでいた。だけど、その友達は女の子だと思っていた。まさか、男の子だったなんて。


 いやいや、だとしたらヤバい。あの頃、私はかーちゃんと色々なエロい話を普通にしていた。かなりディープで変態的なことも。それを話していた相手が男の子だったなんて。いやいや、信じられない。頭が、どうにかなりそう。


「他にも、エロ本ある?」

「えっと。ある、けど」

「えー、見せて見せて!」

「う、うん。これ、とか」


 ベッドの下に隠していたエロ本を取り出してきて、それを渡す。なんだか、とてもドキドキした。それを、嬉しそうに読み始める。これは、夢?


「あっちの学校だと、エロ本が手に入らなかったんだよね。読みたかったのに」

「そ、そうなんだ」


 エロ本を読む姿を見ていると、かーちゃんを思い出した。それで間違いなく彼が、あのかーちゃんなんだと理解した。


 昔の私は、かーちゃんのことを女の子だと勘違いしていた。まさか、男の子だったなんて。


 しかも、男の子が普通にエロ本を読んでいる姿を見ることになるとは。でも、これはイイ。エロい男の子なんて、最高すぎるでしょ。


「ねぇねぇ、久しぶりに一緒に見ようよ」


 かーちゃんに誘われて、私は男の子と一緒にエロ本を読むことになった。昔、こうやって一緒に見たことがあるけど、その頃とは比べ物にならないほどの興奮だった。

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