俺TUEEE系主人公に、お前SUGEEEっていう役のポジションおじさんなんだけど、みんなを褒めてたら主人公がモテなくなってなんかごめん
俺TUEEE系主人公に、お前SUGEEEっていう役のポジションおじさんなんだけど、みんなを褒めてたら主人公がモテなくなってなんかごめん
俺TUEEE系主人公に、お前SUGEEEっていう役のポジションおじさんなんだけど、みんなを褒めてたら主人公がモテなくなってなんかごめん
だぶんぐる
俺TUEEE系主人公に、お前SUGEEEっていう役のポジションおじさんなんだけど、みんなを褒めてたら主人公がモテなくなってなんかごめん
俺TUEEEを知っているか?
まあ、平たく言うと、めっちゃ強い主人公。
だと俺は認識している。
周りとレベルが違いすぎて、圧倒的実力でねじ伏せていく話を俺TUEEE系なんていう事もある。
「ライ! 今よ!」
「わかった! 手加減をして、と……《静電気》」
放たれた『静電気』は黒くて巨大な竜を包み込むほどの雷で、その轟音は街中の建物を揺らした。そして、黒竜は煙をあげながら倒れていく。
「へ? マジか……弱すぎるだろ。今のはただの静電気だぞ」
「「「「「「「「いやいやいやいや!」」」」」」」
これは俺TUEEE系の話だ。
ただし、俺が俺TUEEEの話ではない。
何故わかるか?
俺は、この話を知っているからだ。
今、俺が生きている世界は、前世で読んだ『最強の静電気使い~やれやれ、静かにしてくれ、今のはただの静電気だ。究極雷魔法じゃない~』に酷似しているからだ。
そして、そういう風に知っている物語の中で普通は主人公に転生する。
だけど、俺は違った。
「ライ……お前、SUGEEEEEEEEEEE!」
びっくりする銅級の冒険者のおっさんに生まれ変わっていた。
「ゴメス……この世界の生き物、弱すぎないか?」
「お前がすごすぎるんだって何度言えば分かるんだよ!」
ただただ主人公アゲを続ける男、それが俺、ゴメスだった。
前世で俺はただのサブカル好きなサラリーマンだった。トラックにはねられそうになった子供を助けて死んだ。そして、転生したのは……ゴメスだった。
前世の記憶はなく、そのまますくすくと育ち、無邪気な子供時代、劣等感と挫折を味わう恋多き青年時代、ただただ使い回され小器用になっていく新人冒険者時代、そして、人脈だけは広がり耳年増銅級冒険者、ゴメスだった。
記憶が蘇ったのは、主人公である最強の雷使いライと初めて出会った時。
ギルド試験で、『おいおい、ルーキー、随分とデカい口叩くなあ。よーし、おじさんがいっちょ小僧の実力を見てやろうじゃねえか』とギルド試験テンプレな台詞を吐いて、『やれやれ、静電気』『あばばばばばばばばばばば!』と雷を喰らった瞬間に思い出した。
もう気付いた時には、時すでに遅し、完全に『やれ静』のゴメスだった。
アフロになってしまった髪をそり落としスキンヘッドで、何故か電撃で焼けた肌のまま生き続ける男。ゴメスだった。
だが、俺は不思議といやな気持ではなかった。
人の良いおじさんでヘイトは少ないキャラ、『やれ静のヤム●ャ』と呼ばれ解説キャラで愛されている。それが、ゴメスだった
それに、やれ静の主人公には目立ちたくないとか言ってるのに一向に隠す技術を身につけようとしないので『んんん?』と感じることはあったが、ヒロイン達はかわいい。
勿論、ちょっとスケベで毎回女湯突撃撃退され役ゴメスになびくことはないが、それでもかわいい女の子たちを見ることが出来るのは眼福だ。
典型的ツンデレ金髪ツインテのキアラ、大人し美人聖女のヒナ、元気いっぱいのボーイッシュ盗賊シロ、そして、今回仲間になる黒竜人のドウラとバリエーション豊かなラインナップ。
勿論、全員ライにコロっといく。そういうもんだ。
そして、確か、最終的にはゴメスは、『なんだかんだちゃっかりしてしあわせになりやがってオチ枠』というすげえいい形で終われる。
なので、俺はお前SUGEEEE役を全力で全うする。
今も、普通人に見られたらぶっちゃけ感じ悪いぞ的な溜息をついているライに向かって駆け寄る。
「いいか、お前な。お前のその雷の威力は、1000年前に存在した雷神と呼ばれていたサンダー帝と遜色ないレベルで1000万人に1人の魔法の使い手なんだぞ!」
サンダー帝の伝説を話す為に俺は、コネを使って王立図書館の歴史書を読み漁った。
1000万人に1人も色んな資料を比較し、研究した結果、大体そのくらいだ。
全ては主人公をアゲる為に、身につけた!
そして、俺はまだまだ続ける。
「それに、お前、静電気だからって無詠唱で発動させてたろ! 無詠唱魔法なんて2000年前の大魔導士マージ以外で聞いたことねえよ! あと、俺は見逃さなかったぜ、お前が、静電気を発する前に、身体強化と硬質化、魔力強化をかけて敵の攻撃を無傷で受けていたのをな」
大魔導士マージの伝説は、コネを使って隣の帝国図書館で歴史書やら魔導書を読み漁った。
ライの動きが読み取れたのは、前世の記憶が蘇ってからは、視力強化と鑑定魔法ともうひとつの魔法を強化し続けたお陰だ。おじさんになってからのスキルレベル上げはきつかった。
「やれやれ、俺にとっては特別な事じゃないんだけどな。おっと、まだ生きてたのか、《静電気》×3」
ノーモーションで起き上がりかけていた黒龍に、雷魔法をぶっぱなすライ。
安全確認とか距離確保とかため息つくなとか色々言いたいことはあるが、俺のやるべきことは一つ。
「はぁああああああああああああああ!? 無詠唱で3つ同時発動ぉおおおおおおおお!」
クソデカボイス驚きだ。
これを出す為に、風魔法のレベル上げを死ぬほど頑張った。あと、ボイストレーニングを毎日している。前世のブラック企業で教育係だった俺は挨拶のボイトレを何故かすげー勉強させられたからな。あと、取引先アゲ言葉は一日50個考えるのがノルマだったからいくらでも浮かび上がってくる。
とにかく、他を圧倒する声のデカさと誉め言葉のショッピングモールでライの凄さをアピールする。
それが俺の天命なのだ。
「やれやれ……まあ、なんでもいいだろ。それよりあの竜、女になったな。やれやれ、また厄介ごとが増えそうだ」
ため息つくな。
ウチのブラック企業だったらマジで殴られてるぞ。そのやれやれ。
俺はそう叫びたい気持ちを押さえ、新しい仲間になる予定のドウラに向かってクソデカボイスで叫ぶ。
「はぁああああああああああああ!? な、な、なんで竜が美女にぃいいいいいいいい!?」
「やれやれ、相変わらずうるさいな、ゴメスは」
た め 息 つ く な 。
だが、全ては我慢だ。
とにかくライをアゲ続け、物語をハッピーエンドに、そして、俺自身もそこそこのハッピーエンドに辿り着かせるのが、俺、ヤムチ……ゴメスだ。
なんだかんだでゴメスは色んな攻撃喰らっても、攻撃の詳細を説明して倒れる程度の体力とタフさはあるからな。あとは、パワーインフレボスどもはライに任せればいい。そして、アゲてアゲて、
「ちょっと! ライ、もっと手加減できないの! まったくアンタは、ゴメスも言ってたけど凄すぎでしょ」
ツンデレキアラと、
「あらあら、私としては、ライさんはゴメスさんが言ったすごいスキルで怪我をしないのでうれしいですけどね」
ニコニコヒナと、
「えええええ、二人とももっと驚きなよ、ゴメスとウチが変なのぉお?」
元気っ娘シロと、
「おおお、お主が儂を倒したのか! やるのう! 儂の名はドウラ! 強いものは好きじゃ! ついていくぞ!」
竜女のドウラ。
彼女達とくっつくラブコメを見守ればいいだけだ。
「やれやれ……みんな、勝手にすればいいさ」
た め い き つ く な
この感じの悪い主人公をアゲてアゲてアゲまくって活躍させる!
それがゴメスだ!
と、思っていた時期が俺にもありました。
一年後、俺の描いていた未来とは違っていた。
「ねえ、ゴメス。きょ、今日もアタシの相談に乗ってよね」
「ゴメスさん、私とお茶をする予定では?」
「ゴメース! ウチとデート!」
「ゴメスよ、儂と酒場に繰り出すのじゃ!」
「……」
えーと。
おかしい。
本来であれば、もう主人公はヒロイン達と色々行ってしまっており、ハーレムのはずなのだが何故か俺を取り囲んでいる。そして、主人公はすみっこで足組んで座って、こっちを見ないふりしてチラチラ見ている。
やらかした。
完全にやらかしました。
原因は俺にも分かっている。
俺の『あげ』すぎた褒めスキルのせいだ。
キアラが他の三人に向かって金髪ツインテを振り乱しながら叫ぶ。
「何よ! ゴメスは私がライとの魔法の実力差に落ち込んでいた時に、『いやいやいや、確かにライは大魔導士マージの生まれ変わりでサンダー帝の生まれ変わりで雷神の生まれ変わりで1億人に1人の逸材だが、お前はそれに次ぐ大大大天才だし、お前が人に冷たくしたりしているフリしててもいつもさりげないフォローを入れてる所はすげーやさしいと思うし、お花が好きなのもかわいいし、毎日こっそり努力してるのもかっこいい』って、私に最初に言ってくれたのよ!!」
言った。
確かに言った。あまりにも落ち込んでいたし、『ワタシ、才能ないのかな』とか言い出すから慌てて褒めた。ゴメスに比べれば本当にすごいので本心から言ったのだが、途中から「あ、なんかやばいかも」と思って最後に『って、ライが言ってたぞ』って言ったはずなんだが記憶から消去されている。まあ、ライが言いそうにはない。アイツなら、
『やれやれ……俺が守ってやるから心配すんな』とか言う。
いや、悩みに対しての解決法じゃねえな、それみたいなことを言う。
それからというものことあるごとに、キアラが『ね、ねえ、べつにどうでもいいんだけど、今日のアタシどうだった?』と聞いてきた。ちょっと嫌な感じで言おうとすると金髪ツインテが萎むので、おじさんついつい誉め言葉を言っちゃうよね。それに本当に努力家なんだ。いくらライに敵わなくても努力は褒めてやるべきだろ。
キアラは今もチラチラこっちを見てる。ウン、ソウダネキアラチャンサイショニホメタネ。
すると、今度はヒナがにこりと微笑み、大きな胸をおさえながらゆったりと語り掛ける。
「私は、確かにキアラよりもあとかもしれませんが、ライに比べて人を救えぬ自分の弱さを神に懺悔していたら慰めてくれて、一晩中褒め続けてくれました」
言った。
確かに言った。あまりにも落ち込んでいたし、なんかずっと神様に謝ってばかりだったから気の毒になってフォローしたら、なんかどんどん欲しがりはじめて、一晩中褒め続けちゃった。最後に『って、ライが言ってたぞ』って言ったけど、聞いてなかったよね。言わないもんね、そんな量、彼は。アイツなら、
『やれやれ……グダグダそんなこと考えてんじゃねえよ、寝ろ。睡眠不足だと美人が台無しだぞ』とか言う。
グダグダじゃねえよ、本人真剣に悩んでんだからちゃんと聞けよ、みたいな事を言う。
それからというものヒナの懺悔に付き合わされ、神への懺悔のはずなのに、俺がその懺悔へのフォローを言う事になった。なんかネガティブな事言おうもんなら『ああ! 神よ!』とか言い出すから褒めざるを得ないよね。それに自己犠牲の塊みたいな女なんだ。自分の命より他人の無事だからとにかく自己肯定感をあげて自分自身を愛して欲しいからそりゃ褒めるだろ。
ヒナは微笑みを絶やさぬままこちらに無言の圧をかけてくる。ウン、ソウダヨイチバンナガクヒナヲホメタヨ。
ああ、今度はシロがほっぺたぱんぱんに膨らませながら前に出やがった。
「だ、だったらウチは、元居た大盗賊団に連れ戻された時、一緒に牢獄に入れられたけど、ずっとゴメスが励ましてくれたもんね!」
はい。言いました。
だって、シロずっと『ウチのせいだ』って泣いてんだよ。おじさん、女の子の涙弱いのよ。必死でずっと慰めるよね。ありとあらゆる誉め言葉を使って涙を止めようとするよね。まあ、ライはしないよね。アイツなら、
『やれやれ……泣いてる顔より笑ってる顔の方がかわいいだろうが』とか言うよね。
違うよね、自分の苦しんでいることを聞いてもらいたいよね、本人はね、みたいなことを言う。
それからはずっとシロは俺にべったりでことある毎に頭を撫でられに来る。手に入れたお宝をこっそり俺にいの一番に持ってきてくれるもんで、おじさんマントの下、最強装備なんだよね。それで、シロ『ウチのモノ……』とか言って恍惚としてるよね。それに本当に健気なんだよ。自分が元々大盗賊団出身だからってずっと負い目を抱えているんだ。あんな小さな子が。少しでも褒めてその罪負う心軽くしてやりたいのが普通だろ。
シロよ、とんとん身体を叩くな。ウンソウダネ、チョウコウガクナソウビヲアリガトウネ。
はい、ドウラが、出たー!
「よいか、儂はそういうレベルではないぞ。竜族同士の大戦争で、ゴメスは誰よりも大きな声で喉から血が出る程儂を応援してくれたのじゃ」
はい。
だって、しょうがないじゃないか。ライが言ったんだ。
『やれやれ……ここはお前らに任せた。心配するな、すぐ戻る』
って大戦争の最中、何かの気配を感じていっちゃったんだもんね。いや、戦争に心配ない瞬間なんてねえんだよみたいな事言っていっちゃったんだよね。
だから、必死で応援するよね。限界超えるまで応援するよね。あと、普通に自分の仲間が死ぬなんていやだろ。絶対に死んで欲しくないけど俺には力がないから、ただただ喉から血が流れる位応援した。身体中から血を流して戦っていたドウラに比べれば俺なんてゴミだ。
そしたら、頬を染めて言ってきたのよね。
『竜族は強者に愛を捧げるもの。お主の愛受け取ったぞ』とか言われて。
ドウラ、口から煙を吐くのはやめよう。ウン、ソウダヨキミハサイキョウダヨ。
そして、話がややこしくなったのはそれからだ。
四人がすげえ褒められたくて頑張りだした。努力ってすごい。
最初は、互いに自分が他の女性陣より褒められるんだって頑張ってたけど、最終的に、俺がライを一番褒めてたから、ライを超えようとし始めちゃったよね。そんで、今、超えかけてるんだよね。努力ってすごい。
「やれやれ……お前らな」
「「「「ため息つくな。イラっとするから」」」」
ライの言葉を遮る四人。黙るライ。おい、がんばれよ。あと、ほんとため息つくな。
ライもなんか凄い孤独を感じ始めたせいかどんどん成長しなくなっているよね。
まあ、四人が主人公級の力を手に入れ始めているので多分世界は救える。
だけど、
「「「「ゴメスもっと褒めて」」」」
こんなはずじゃなかったんだ。
俺は、ゴメス。
主人公SUGEEEの為に生み出された『やれ静』の●ムチャ、それがゴメスだったはずなんだ!
ただ解説してデカい声で褒めてただけじゃないか!
「な、なあ、ゴメス、俺も……」
ライ! お前もかよ!
その後、世界を救った英雄が誕生する。
10億年に一度の誉め言葉の天才。
彼のスキンヘッドが輝く像を四人の自信満々に笑う女傑たちの像が取り囲んでいたと言う。
それが、ゴメス。
『なぁああんでだよぉおおおおお! 俺、SUGEEEな、おいぃいい!』
了
俺TUEEE系主人公に、お前SUGEEEっていう役のポジションおじさんなんだけど、みんなを褒めてたら主人公がモテなくなってなんかごめん だぶんぐる @drugon444
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ネクスト掲載小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます