天才様には気をつけて♪

Hign

第0話:導入

『セラス・エヴィ・ルトランド! 俺はお前と婚約破棄し、ルナールと婚約をする!』

『……承知しました。喜んでお受け致します。』


 何故こんなことになったのか。義妹は意地悪い顔をしながら私を見下している。そして、そんな義妹の隣にいる彼は、義妹であるルナール・リア・ルトランドの肩を抱きながらそのように言う。

 彼は、ガルトロス王国の第三王子であるフォルス・アルディ・ト・ガリエル。金髪碧眼で容姿は良い方だが文武両道かと言えばそうではなく、どちらかと言えば中の下バカだ。

 妹も頭は良い方ではない。妹の容姿は少しカール気味のピンク髪に水色の大きな瞳だ。

 そして、今日は彼女の好きなピンクと王子の髪の色である金色をふんだんに使ったドレスを着ている。妹の噂に良いものは差程なく、殿方を侍らかせている、という噂はよく聞く。その噂を聞くたび父が頭を抱えているのは日常茶飯事だ。

 私は、銀髪にストレートの髪に緑色のツリ目。緑色の瞳はルトランド家に代々受け継がれた目なので、私がルトランド家の者と言うのがよく分かる。ルトランド家は、この国の侯爵家で建国時からある有所正しい家だ。そして、魔法のあるこの世界で王国の風の塔の長パラム・ドゥックスでありルトランド家当主が、父であるヴァン・フォッサ・ルトランドである。

 義妹ルナールは後妻である義母の完璧な連れ子でルトランド家との関係は一切ない。義母は元王女で現国王の腹違いの妹だ。義母の母は土の塔の長アールデ・ドゥクスであり現ラントルン侯爵の叔母にあたる。その為、先代ラントルン侯爵の妹でもあるということが分かる。

 父との結婚は彼女の無理意地だったらしい。そして、フォルスとルナールは従兄妹同士という事だ。第三王子と義妹は私を陥れたかったという理由でこんな事をしたのだろう。そして、見た目がタイプだという、打算しかないこの2人の婚約はある意味お似合いだと思う。


『お前は今すぐに幽閉の塔アフラーク・ピルゴスに入るよう。衛生兵!この者を捕らえよ!』


 そう言った瞬間、兵は驚き戸惑いながらも私を拘束した。凄く優しくしてくれてはいると思う。

 このパーティーは国王や王妃、第一王子御一行と第二王子御一行が居ない中で行われている。そして、第四王子に止める力もない。だから、このようなことが出来るのだろう。

 本当に惨めな事だと思う。



 

『本当に幽閉されるなんて……さて、コレからどうしましょう……』


 お兄様達もお父様も居ないし……国王陛下や王妃様……第一王子御一行と第二王子御一行も居ない。家には、私のことが嫌いな義母しか居ない。さて、こんな無茶苦茶な状況をどうしましょう。

 そんな時だ、階段の方から足音がした。


『誰だ! ここが幽閉の塔と分かっての行動か!』


 騎士達のそんな声が聞こえる。その声は貴族に対して言っているようには見えない為、メイドや騎士などだろうと予想がついた。


『彼女の保護を国王陛下とルトランド侯爵様から頼まれましたので馳せ参じました。それと、これが証明書ローズングです。』


 その声は女性のものだった。騎士達は紙を見たからか。


『失礼しました! どうぞ。』


 という声と共に階段を上がる足音が聞こえてくる。そして……私の目の前にはフードを被った高身長の女性が立っていた。


『あら……証明書は国王陛下やお父様からだけだったの?』


 私のその質問に彼女は少し微笑みながら言う。


『いいえ……他のサインもありましたよ。』

『でしょうね……。』


 やはりと言う反応しか出なかった。目の前の彼女が誰なのかを考えれば当たり前のようにも感じた。

 

『作戦はどうなの?』

『上々ですよ♪それと、国王陛下一同が王都に帰ってきているので明後日頃には着くんじゃないでしょうか』


 彼女はそんな事を言いながら鍵を開ける。ほんの数分の幽閉の塔滞在だったが嫌な気配はやはりするものだと思った。

 

『今回で一段落してほしいかぎりよ……。』

『それは私も同意見です。』

『なら……始めましょうか。』

『はい。お供しますよ。』

 

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