イエイヌは語らない

ルー・ガルー

ミリちゃんは友達が少ない。

「ねえ、部長、ちょっとお話していい?」

そう言って話しかけてきたのはミリちゃんだ。彼女もまた2人きりの時は話しかけてくれる。本当に2人きりの時だけだけど──今日ももう野鳥観察部はとっくに解散してしばらく経ち、満月はてっぺん近くまで登っていた。こんな時間に学校にいていいのかという時間だけど、ここは離島でセキュリティが緩いのだ。

ミリちゃんは何から話すか迷って最終的に抱きついてもふもふな首の辺りに顔を埋めている。そのミリちゃんから野球部の子の汗の匂いがした。そして重い口を開く。

「部長は私と本当に友達になってくれるかな。私、友達が居ないからさ」

「野球部の子と仲良くやってきた後に友達がいないなんて信じられないよ」

「──沢山話しかけてきてくれて──好きだって言ってくれるけど──本当は私の事なんだと思ってるんだろ」

「ミリちゃん?」

「私って都合がいい女なのかな──友達居ないから話しかけられるだけで嬉しくなっちゃって──」

ミリちゃんはとっつきずらい子だ、お友達は悪そうな子が多い。もっと素直に生きればいいのに。部長の私としては何かしてあげたいが、励ますことしかできない。

「ふふっ、部長くすぐったいよ。あー部長となら1番目の友達になれるのかな」

「なれるよミリちゃん、私はミリちゃんのお友達だよ」

「ふふ、ありがとう部長──部長はあったかいなあ」

ミリちゃんは静かに眠りに落ちていった。

「おやすみミリちゃん」

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