第27話 定期検診

定期検診の時に、担当医の那須野先生にパソコンの「しせんにゅうりょく」について母が質問してくれた。


この技術は、まだ実用化されたばかりだけど、AIの技術を取り入れるなどして、今後急速に発展する可能性のある分野だと教えてもらった。


「でも、キヨトくんは指先が動きますから、パソコンが見えるようになったので、マウス操作だけでもできそうですしね」


確かに……そうかも。先生さすがだ。それは、気付かなかった。パソコン画面がちゃんと見えるようになったから、必ずしも視線じゃなくても大丈夫かも。


「視線とマウスと併用で試すといいかもしれませんね」


「そうですね。ありがとうございます」


「ところで、キヨトくん、眼鏡は慣れましたか?」


那須野先生は僕の方を見た。僕は母の手にYESを合図した。


「慣れたみたいです」


「それは、良かったです。それにしても、今までほとんど見えてなかったみたいで、かわいそうなことをしてしまいました」


「ええ、私も全然気が付かなくて。取り返しのつかないミスをしてしまったと思っています」


母さんは悲しそうな表情をした。


『大丈夫だよ。あれはあれで結果オーライなんだから、気にしないで。全てはベストタイミングなんだよ』と、僕は心の中で言った。


パソコンを使って文章で言葉が伝えられたら、こういう細かいことも伝えられるのかもしれないな。 

僕はワクワクした。


母さんは資料を集めてくれて、なるべく最短でパソコンをコミュニケーションツールとして取り入れてくれることになった。パソコンを自分で操作できるなんて夢みたいだな。


トントン拍子に進んで、波に乗れている感じがするよ。神さまに教えてもらった、先にありがとうをイメージする方法が上手くいったのかもしれないな。

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