第24話 視線入力
僕は無事退院することができ、最近やっと体調が戻ってきたところだった。
僕の計画はあのままストップして進展がないままだった。
明日は「脳性麻痺のシンポジウム」というのがあるそうだ。母にタブレットで情報を見せてもらえた。
母は僕を連れて行くことを迷っているようだった。この間、外出した後体調を崩して入院になったし、外出に慎重になるのは仕方ないだろう。
こういうところはきっと人が沢山いるから、まだ完全に回復できたとは言えない今の状態で行くことは叶わないだろうと僕も思った。
そう思いながらも、一応タブレットの情報を見ていた。
母がタブレットの操作をしてくれていて、僕は画像や文字を追う。とてもありがたいことだけど、次に進んじゃったり、もう読み終わって次を見たくてもしばらく進まなかったりと自分のペースで見れないことがもどかしかった。なんとか、タブレットの操作ぐらい自分でできないだろうか、と思う。
そんな時一つの情報が僕の目に飛び込んできた。
そこには、人の目の動きで文字を入力する画像があった。
そんなことできるの???
【
という文字を見て、僕の中のセンサーが警報を鳴らした。
この言葉の意味って、目で文字を打つことだよね。合ってるかな?
だとしたらこれって僕にも出来ないかな?
僕は母に指を力の限り連打して、伝えようとした。それに、思い切って声も出してみる。声、というかほとんどよくわかんない音しか出ないけど。
「アァ"」
僕は力の限り声も出してみた。
ねぇ、お母さん、気付いて。
【しせんにゅうりょく】だって。
これ、僕でもできそうじゃないかな。
見て、すごいよ。
センサーを使って、視線でキーボード操作できるんだって。
これ、僕やってみたいよ。
お願い、気付いて!!!!!
なんてことだろう。母は、僕が苦しみだしたと勘違いして、タブレットを取り上げてテーブルの上に置いてしまった。
そして、いつものように僕の呼吸を確認したり、胸の動悸や脈拍を確認しだした。僕の指にパルスオキシメーターを付けて、計測する。熱を計る。その上、排泄の確認まで。
僕は、苦しいわけじゃないんだよ。お願いだから気付いてよ。
僕の目からポロポロと涙が出てきた。
「あら、涙が沢山出ちゃったね。キヨト、どこか調子悪いの?」
「………」
僕は精一杯の声とテーブルの上に置かれたタブレットへ目線を向けてアピールした。
どうか僕の目線に気付いて下さい。
タブレットを見て!
このチャンスを逃したらまた次はいつになるかわかんないんだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます