第14話 見える世界
眼鏡を作ってもらい、生活の質が格段に向上した。
長い間、光と色がぼんやり見えるだけの霧がかったモヤの世界にいたのに、眼鏡をかけたら物の輪郭がはっきりとしていて、世界がクリアで明るくなったんだ。
まるで別世界だ。
周りの様子がはっきり分かるし、人の顔も見えるし、自分の顔も鏡で見ることができた。
「キヨト、自分の顔見えてる?」
母さんは僕の前に鏡を置いてくれた。久しく自分の顔を見ていなかったこともあり、僕ってこんな顔だったっけって思っちゃったよ。
僕は今十六歳だけど、中学生とか下手すると小学生と思われることがあった。その理由が自分の顔を見てよくわかったよ。確かにとても幼く見えた。身体も小さいからね。仕方ないけれど。
一番嬉しいのは母の顔がはっきり見えるようになったことだった。母の表情が見えるのも嬉しかった。
今までは、目で見えなかった分、他の感覚をフル活用していたんだ。
たぶんだけどね、僕はこの世界を『心の眼』で見ていたんだ。
第六感みたいな感覚が進化したのだと思う。その感覚があるからこそ、僕は目に見えない世界をはっきり感じて楽しむことができた。この世界は目に見えるものが全てではないし、むしろ目に見えないものの方がほとんどだってことがわかった。
目が見えなかったことも悪いことばかりじゃなかったってことだと思う。
今は見えるようになったことが、ものすごく嬉しいけれどね。
これまで、見れてこなかったものを沢山見ようと思う。僕は、家にいても、テレビを見ていても、公園に散歩しに行っても、沢山の物を見ることができて
すごく楽しかったし、幸せだった。
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