第11話 視力検査のハプニング
でも、右目が真ん中ぐらいまで見えたところで、僕はもう限界だった。目が回って気持ち悪い。
「ウ"ッ……」
マズい。吐くーー
でも、何も言えないし、自分では受け止められないし、体勢も変えられなくて、もうそのまんまの体勢で口から逆流したものが出てきてしまった。最悪だな。本当にごめんなさい。量が少なかったことだけが救いだった。
「あらあら、キヨト、出ちゃったね」
母さんは全く動じることなく、僕が呼吸出来てるかを確認してから、タオルやティッシュで拭いてくれた。さすが僕の母だな。
母さんにとってはよくあることだけど、周りは騒然としていた。服に付いてて汚いし、臭いもヤバい。僕は心の中では大パニックなのに顔は無表情だし。
こんなこと思ったら大変申し訳無いけど、シュールな地獄絵図のようだなってチラッと頭をよぎってしまった。
先生、母さん、悪ふざけなこと考えてごめん。
でも、こんなの笑い飛ばさないと僕だってやってらんない。自分を責めるのはもうやめたんだ。責めても何も生まないってもう十分わかったからね。
それに落ち込んでても次から次へと落ち込みたくなるような案件に遭遇するんだから仕方ない。
だから、こういう嫌なことはさっさと心の中で笑い飛ばして早く忘れようといつも心掛けていた。
眼科で吐く人なんてほぼ居ないだろうから、先生はかなり慌てた様子で箱ティッシュや濡れたタオルを持ってきてくれたりした。
僕の検査は一旦中断した。母は車に積んである着替えを持ってきてくれることになった。用意がよくて本当に有り難いな。
ハプニングはあったけれど、今日は僕の人生の中でかなり重要な成果があった。
だって、目がちゃんと見えそうなんだ。
そしたら、僕の思いついた計画どおり、パソコンを使って文章で何か伝えられるかもしれない。
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