第10話 視力検査
母さんと合図を決める打ち合わせをした。なるべく僕の負担にならないような、でも、確実に伝えられる方法は、指だろうか眼球だろうか。
母さんはどっちがいい?と僕に聞いてくれた。
眼球は確実だけど、かなり負担が大きいんだ。さっきみたいに吐きそうになっちゃうけど、でも、指が変な動きするよりマシかもしれない。これはこれからの僕の人生を決めるぐらい大事なことなんだ。
僕は眼球の動きで回答するように伝えた。
重たい眼鏡みたいなものをかけられて検査が始まった。ちゃんと答えられるかな。ちょっと緊張してドキドキする。
僕が眼球の動きで母に伝えて、それを母が見て口頭で先生に伝えるという何とも回りくどい流れだ。でも、仕方ない。
最初のうちはなかなか何も見えなかったのでずっと『見えません』の反応を伝えていたら、僕が本当にこの検査のやり方や意味を理解しているのかと先生も母からも疑われているような、気まずい空気が流れた。
でも、そのうちレンズを沢山入れ替えてもらっていたら……何となく見えるようになってきたんだ!
見える!!!
嬉しい!!!
僕は叫びたいほど嬉しかった。
踊りだしたいほど嬉しかった。
勿論実際には出来ないけど。
見えるってこんな感じなんだな。
僕の合図は『見えません』から、上下左右を伝えるような合図に変化していった。
母も先生もやっと僕の反応に手応えを感じてくれたようだった。
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