恋愛不器用だけど青春してます
@silvia2023
第1話 別れのあとも最悪
「葵は部活ばかりで私と遊んでくれない。LINEだって寝落ちするまで付き合ってくれないし、私のことどう思ってるの?」
由比ヶ浜葵は、学校の体育館裏で彼女の高橋凪に問い詰められていた。
バドミントンの推薦で私立舞山高校に入学した葵にとっては、彼氏彼女の関係より、部活を優先するのは当然だった。
凪だってバスケ部だから、同じ運動部同士わかり合ってもらえると思ってたが、違うようだった。
「凪の思い描く付き合い方は、最初から難しいって言ったじゃないか。平日の練習に、週末の遠征とかで、なかなか時間取れないって。」
「それでも、もっと私のために時間を作ってよ。これじゃ付き合っている事にならないよ。」
葵は180cmで細身のルックス、平均的な目鼻立ちだが、バドミントン部のエースで目立った存在だ。
高身長、運動できる男子のため、他の運動部女子から人気があった。
特に、体育館を使う部活女子からは、目立った存在で、入学してから告白される事が多く、その度に付き合ってきた。
しかし、この性格のため、だいたい1か月持たずに振られるのが常だった。
「もうついていけない、私たち別れましょう。」
「わかったよ。」
短く答えると、凪は泣きながら校舎に走って行った。
これで今年入学してから4人目。
告白する勇気のある女子からのアプローチは、基本的に断らなかった。
葵には、告白する勇気がないので、それを乗り越えて告白する女子を尊敬をしていた。
しかし、その思いは理解されず、部活に没頭してしまう自分を止める事もできず、同じ結末を辿る。
「男子校に行けばよかった。」
天を仰いで、小さく呟いた。
振られるたびに傷つく。
今回も、手を繋ぐ事しか出来なかった。
心に傷を負ったが、昼休みはまだ時間があったので、自主練のため体育館に入った。
体育館の中から、複数の女子生徒の声が聞こえる。
「あんた、私の彼氏と2人で買い物行くってどういう事?」
「私は…。」
1人の女子生徒を3人の女子生徒が取り囲んで入る。
「ちょっと可愛いからって調子乗らないでよ。」
「普通彼女がいる男子と2人で出かけるなんて常識的に内容。」
囲まれている女子は、確か帰国子女で男子に人気のある加茂ミリだった。
ハーフだか身長は低く、髪はストレートのブロンド、日本人離れした容姿が、男子から絶大な人気があった。
彼女と名乗った女子は木村真琴。
同じバドミントン部だった。
「私の彼氏に手を出して許さない。」
木村が加茂に手を出そうとして、右手を振り上げた。
振り上げたモーションを確認した瞬間に、土足のまま体育館に入り、木村の手を掴んだ。
「暴力はよくない。これじゃ一方的ないじめだ。」
右手を掴まれた木村が、驚いて由比ヶ浜を見る。
「なんで由比ヶ浜がいるの?私の問題に口を挟まないで。」
「木村の暴力沙汰で、部活が出来なくなるのは困る。」
「バドミントン馬鹿。そんなんだから彼女と続かないんだよ。」
さっき彼女から別れを告げられたので、心に与えるダメージはでかい。
「加茂を叩く意味は、第三者が見て理解できない。よくないぞ。」
「離せ馬鹿。」
木村は手を振り解く。
他の女子2人はオロオロしてるし、加茂は泣いているカオスな状態になった。
「とにかく暴力はよくない。一時の感情で加茂を叩く理由はないはずだ。」
木村は振り上げた右手を、バツの悪そうに左手で押さえている。
「見なかった事にするから、体育館から出ていけ。練習の邪魔だ。」
「真琴、これ以上はヤバイから戻ろう。」
「うっ、うん。」
木村と2人の女子生徒は、こちらを振り返らず出口に向かって歩いて行った。
「加茂、大丈夫か?」
相当怖かったのか、目から涙が溢れてその場に座り込んでしまった。
彼女に振られて、バドミントン部女子の暴力未遂を見つけて、慌てて体育館に土足で入ったので、モップがけをしないとこっちが怒られそうで…散々な状態だ。
しかし、モップがけよりも、目の前で泣いている女子を放っておいたら、ひんしゅくを買ってしまう。
泣いている女子の対応はわからないが、とりあえず隣に座って天井を見た。
「男子校に行けばよかった。」
泣いている加茂の隣でつぶやいた。
加茂は泣き止みそうになかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます