第4話 優太の悩み

2023年11月2日 PM4:00


「ほぉ・・・」


ため息を一つ。

優太が漏らした。


「どうしたの、パパ・・・?」

握った小さな手の少年が顔を上げて聞いた。


「な、何でもない・・よ・・・」

力ない声を優太は返した。


心配そうに見上げる息子の顔を優太は切ない気持ちで見つめた。


疑いが確証に変わっていく。

息子は、自分の子ではない。


『責任・・とってくれるよね・・・?』

妻となった沙也加の言葉が蘇る。


あの時。

その言葉を信じて。


優太は恋を諦めた。


一瞬。

愛していた少女の面影が浮かぶ。


初めての恋。

そして、永遠の愛を誓い合った人だった。


それが。

不条理な出来事で。


離れ離れになり。

別の女と結婚していた。


健太。

それでも、息子は可愛い。


もしかすると。

健太の父はヤツかもしれない。


考えれば。

考えるほど。


疑う余地はあった。


だが。

もう、遅い。


それは。

自分の罪でもあるのだから。


「だけど・・・」

優太は小さな声で呟いた。


「できるなら・・・」

「えっ・・・?」


めざとく聞く幼子の声に我に帰る。


「何でもないよ・・・」

切ない表情で無理に口元を綻ばせた。


「パパ・・・」

健太は小さな手で優太の指をギュッとした。


まるで。

父を励ますように。

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