これを愛と呼ぶか
aria
綺麗になれないわたし
「おはよう」
いつも通りの朝。いつも通りの教室。
でも貴方の隣は私じゃない。
ただそれだけ、なのにこんなにも苦しい。
愛じゃない。こんなに汚くて苦しいのは、
きっと。
私と彼女は親友だった。
保育園の時から一緒で、家も近くて、趣味も性格も全然違うけど、話もテンションも合う。そんな友達だった。
小学校高学年から仲のいい4人グループが出来て、4人で遊ぶことが増えた。
3人は私と違って人気者で、だからこそ私をうざったく思う人が沢山いた。
それでも私を好きだと、一緒にいたいと言ってくれる3人が私は大好きだった。
中学に入り遊びの自由度も増して、小学校の時より遊ぶことが増えた。中3ではさらに何人かを加えて、大人数遊ぶことも増えた。
楽しい3年間だったと胸を張って言える。
けど風向きが変わったのは高校だった。
頭のいい2人は高校で、この地から出ると言った。
宣言通りそれなりに難関な高校に見事合格し、華々しい高校生活をスタートさせた。
私と彼女はその地の高校に進んだ。
小さな高校ながら周辺の4つの地区が合わさる学校であり、知らない顔も多く見かける。
そこにいたのは私の大嫌いなカノジョだった。
私は結構な人見知りで、親友がないないと周りと会話もままならないくらいには重症だった。手足は震えるし、冷や汗が止まらなくなる。
けど、絶対に治す。高校では私から人に話しかけると誓っていた私は初めの自己紹介で趣味が同じ人に話しかけるなど、私にしてはとても全力で頑張っていた。
それでもやっぱり親友が1番だし、親友といることが多かった。
私はスキンシップが多くて、いつも距離が近いと言われていた。治そうとしても治らなくて、申し訳ないなと思いつつ、やめられずにいた。
ある日彼女はカノジョと仲良くなった。
脈略もなく、突然。
強いて言えば総合系の班が同じだっただろうか。
急に通話の話をしだしたり、2人で話すことが増えた。
臆病な私は話に割言って一緒に話す程の勇気はなかった。
「ねえ、◾︎◾︎。」
そう問いかけても、私の声ははしゃぐ2人に聞こえていなかった。
ある日の席替えで2人は隣の席になった。
いつも2人で机をくっつけてご飯を食べていた。
苦しかった。
私とはそんなことしてくれなかった。
話に入ろうとしてもカノジョが見せるスマホの画面はいつも彼女に向いていて、私は見ることも叶わず、適当な相槌をうって良さそうなタイミングで、適当に笑うそんなことの繰り返しだった。
廊下を歩く時、腕を組んでいる2人を見た。
私にはすぐやめろって振り払うのにね。
「ジュース買いに行こ!」
カノジョが言う。
「しゃーねーな笑」
彼女は返す。
「私もいく」
そう言って教室を駆け出て行く私。
私が誘ったら、それくらい1人でいけって言うのにね。
カノジョが言ったらそうもすんなり行くんだね。
分からない話を適当に聞きながら、腕を組み笑い合う彼女たちの後ろで、なんとなく笑っていた。
教室を出ていく彼女に呟く。
「ちょっとだけ待って!!ごめん!」
前を見ると◾︎◾︎は腕を組んでカノジョと教室を出ていった。
私の言葉はまるで空気に溶けてしまったかのように、跡形もなくその場から消えていた。
耐えられない。何度もそう思っている。
いつも冷水に浸かっているような苦しさや冷たさを感じる。
私が離れてもいつも通りカノジョと過ごす◾︎◾︎を見る度、苦しくて吐きそうになる。
私とカノジョどっちが好き?
なんてめんどくさい女のようなことを呟いてしまいそうになる。
それでも、1歩後ろを歩いて、楽しげな彼女達を見るよりは幾分かマシだった。
だから距離を置いた。
親友じゃなくて、友達として。
普通に友達はいるし、男子ともなんとなく絡む。
だから別に辛くは無い。きっと。
けどずっとぬるま湯に浸かっているよう。
楽しい、あたたかい。そう思っても、底冷えするような冷たさが心を刺して止まない。
嫉妬して、カノジョが嫌いで、そんな私が1番嫌いで、それでも彼女は大好きで。
嫌いだけど、嫌いになれない。
私は臆病者だから、かっこよく過去を断ち切って前に進めるほどできた人間じゃない。
離れるなんて出来ない。
だって私と彼女は親友で、仲良しだから。
私はどんな仕打ちがあっても、彼女といる時が1番楽しくて、幸せで。大好きだから。
だから火傷のようにじくじくと痛む胸に知らぬふりをして、今日も彼女と大嫌いなカノジョの横で適当に笑うんだ。
こんなの愛じゃない。
愛はもっと綺麗で美しくて。
あたたかくて、幸せだろうから。
汚れた私が抱えるのはきっと愛じゃない。
だれか、わたしに、あいを。
これを愛と呼ぶか aria @aria_1228
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