第18話 セクシー
「ねえなーくん、替えのシャンプーってある?」
「あぁ無くなったのか? それなら洗面所の戸棚に――って、うおい……!」
那月の学校が始まってもさして変わらない日常が続く、4月上旬のとある夜。
シャンプーの替えを求める那月がバスタオル一丁でリビングに現れやがったので、俺は過剰なリアクションをしてしまったところだ。
「……なんだよその格好は」
「お風呂中なんだから、そりゃあね」
「出てこなくて良かったろ……」
呼んでくれりゃあシャンプーの替えなんて幾らでも用意してやったのに、なんでわざわざ浴室から出てきたんだよ……。
火照った裸体にバスタオルオンリーの那月。
女性らしく成長した那月のその格好はあまりにも性的過ぎる。
……同居初日から必死でこいつをそういう目では見ないようにしてんのに、那月の方からこういうことをしてくるんだから本当に参ってしまう。
「ほれ……替えのありかを教えてやったんだからさっさと風呂に戻った戻った」
「なんで目、逸らしてるの?」
「あのな……自分の格好を考えろよ」
「えーw あたしは別になーくんになら見られてもいいも~んw」
いたずらな笑みを浮かべながら、那月が風呂場に戻るどころか俺のもとに歩み寄ってきやがった。
こいつ……。
「ねえほら、あたしセクシーでしょ~?w」
前屈みになって、その胸を扇情的に見せ付けてくる那月。
目を逸らしていても分かる、圧倒的な豊満さ。
去年のお盆のときは……真っ平らとは言わないが、さほどでもなかったのに……なんで一冬超えただけでこんだけ育っちまったんだよ……。
「いいからほら……風呂に戻れって。セクシーなのは認めるから」
「認めるんだ?w」
「あぁ認めてやるよ。だからきっちりあったまってこい」
那月のあしらい方は幾つかあるが、一番有効なのは那月の言い分を否定せずに慮ることだ。セクシーじゃねえよ、なんて返事をすれば、俺にセクシーさを認めさせようとして躍起になるのがこいつの性分。
だから素直に那月の言い分を肯定してやれば、こいつはあっさりと満足してそれ以上に騒ぎ立てることはないはずなのだ。
「えへへ……♡」
ほらな、いたずらな表情が消えてくれた。再会してすぐの頃は、そのあしらい方を忘れていた部分があった。だから割とつけ込まれていたが、今はもう問題ない。こいつは扱い方さえ間違えなければ、単に可愛いだけの従姉妹だ。この状態ならば害はない。
「ねえなーくん、あたしセクシー?」
「ああ、最高にな」
「じゃあこれ――サービス♡」
ちらっ、と那月が一瞬だけバスタオルをはだけさせ――ってオイ……!!
「お、お前なっ……!!」
なんか桜色の可愛いヤツが見えちまったんだが……!
「えへへ~、じゃあ改めてお風呂行ってくるね~♡」
若干照れた表情で、那月は足取りを弾ませながら風呂場に戻っていった。
そんな中で、俺はこう思う。
……正しく扱っても、那月は有害であると。
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