ダンジョンマスターのお仕事
さて、改めて自己紹介。私はフローシャ。7才だけど、アラフォーの転生者だから、ちょこっとならダンジョンの知識もある……かも?
フローシャのままだったら、結構すぐ倒されちゃってたんじゃないかしら。
それにしてもスライムから山ぶどうが出るなんて、今から来る冒険者はラッキーよね。
ダンジョンの管理とはいっても、光り輝くコアを守るためにこの部屋にいればいい、だけしか聞いてないから外に出ようがない。ざっと聞くと退屈なんだけど、けっこう快適に暮らせちゃってるのはアンデッドになったせいなのかもね。だってカーペットなんてないし、しょうがないじゃない。
時間が経つと、おなかがすいてくる。
HPはギリギリやばかったようで、まだ66あたりをいったりきたりしている。MAXまでほど遠い。
山ぶどうを食べながら、おいしいカツ丼食べたい、と夢想する。
オークがいるからお肉は出るでしょう。あと鳥も欲しいわね。ゴブリンは食べられないから、食べられるものだけにしちゃおう!
料理に必須な卵。これはね、スライムをエッグスライムにして配置すればOK。山ぶどうも欲しいから両方共存させるわ。
【1Fに配置モンスター】
【スライム、エッグスライム】
「エッグスライムかもーん」
ぽかっ
【エッグスライムは9999のダメージを受けた】
【卵×1 魔石×1を手に入れた】
「やっぱり目玉焼きは手に入らないかー。あと調味料がのきなみ欲しいところよね」
「調味料スライムかもーんっ」
ぽかっ
【調味料スライムは9999のダメージを受けた】
【油×1 醤油×1 砂糖×1 塩×1 料理酒×1 出汁の元×1 コンソメ×1 味噌×1 魔石×1を手に入れた】
「調味料スライムはちょっと固かったわね。ドロップアイテムを詰め込んだら強くなるのかしら。どうですかー?!」
【その通りです。ちなみにダンジョンマスターはすべてドロップしますが、ユーザーはランダムドロップとなります】
「ありがとうー! じゃあ、問題はないわね。ちょっとは強いの置いとかないといけないし」
【2F配置モンスター】
【クック鳥、マンドレイク】
「クック鳥、マンドレイクかもーん」
ぽかっ、ぽかっ
【クック鳥は9999のダメージを受けた】
【鶏肉×1 魔石×1を手に入れた】
【マンドレイクは9999のダメージを受けた】
【米×1 小麦粉×1 ホットケーキミックス×1 魔石×1を手に入れた】
よーし、野菜もいってみよう!
【3F配置モンスター】
【オーク、野菜スライム】
「オーク、野菜スライムかもーんっ」
ぽかっ
【オークは9999のダメージを受けた】
【豚肉×1 魔石×1を手に入れた】
ぽかっ
【野菜スライムは9999のダメージを受けた】
【たまねぎ×1 ピーマン×1 長ネギ×1 かぼちゃ×1 じゃがいも×1 キャベツ×1 魔石×1を手に入れた】
【1F配置モンスター】
【スライム、エッグスライム、調味料スライム、野菜スライム】
さぁ、この位食材があれば何でも作れそうなんだけど、キッチンがないのよね。
転生者らしく土魔法でお皿は作ってみたのよ。でもコンロの作り方がわからなくて、結局山ぶどうをかじっている。
「親子丼やカツ丼ってこの世界にあるかしらー?」
【まず米がありません。極東の大陸で作られていますが、この大陸では新発見です】
「あとコンロがないんだけど、作れない?」
【私が使っていたものでよければ、東のドアを開けた先にあります。今、鍵を開けました】
「薪ストーブみたいなかんじね。薪もあるし……ありがとう。あっ、フライパンもある! 良かったわ。ありがとう!」
【人間に見つけられないように、個室で調理していました。フローシャも注意をしてください】
「それなんだけど、せっかく食材を放出しているし、レシピを伝えたいんだけどどうしたらいい?」
【レシピを書いてドロップアイテムに入れたらどうでしょうか?】
「紙は……ああ、ここにあったわ。生活雑貨はだいたいここにあるのね。ペンを使わなくても念じれば絵も写せるみたい。やってみるわね!」
クッ〇パッド改め『ダンジョンの作り方』を開き、親子丼のページを念じて写す。これをエッグスライムに入れ込むイメージをして、と。
「エッグスライム、かもーん」
ぽかっ
【エッグスライムは9999のダメージを受けた】
【卵×1 親子丼のレシピ×1 魔石×1を手に入れた】
「よし!これでいいわね」
キッチンに移動して、まずはお米を炊く。
水魔法で水を出して、お米を研ぐ。しばらく浸水させて、薪の火をつけ、炊いていく。
鍋に醤油、みりん、料理酒、砂糖、出汁の元、水を玉ねぎとフライパンでしばらく煮る。一口大に切った鶏肉も加えて、火が通るまで煮る。溶き卵を加えて火を通し、出来上がり。
どんぶりに白米を盛り付けて、その上に乗っける。
仕上げに三つ葉をのっけたいけれどないので、これで完成。
「いっただっきまーす」
ぱくっ、もぐもぐ、ゴクン。
ちょっとご飯に芯が残ってて硬い気がするけど、食べれるからこれで良し。
これで餓死は縁遠くなったわね。デザートは山ぶどうがあるし、食料に余裕が出来ると、ほっとするわね。
そういえばパンが食べたいんだけど、パンも焼かないと食べれないのかしら。
「パンはどうやったら食べられるー?」
【この世界のパンだったら、私のパン種でよければ、右奥の棚に入っています】
「ありがとう。結局焼かないと食べられないのね」
【ダンジョンのユーザーから奪うという手もあります】
「ダンジョンマスターだもんね。色々やってみるわ。まずはパンを焼きます」
パンだねをこねてこねて、うーんいい感じ! 整形して、オーブンで焼く!
ちょっと火が強かったかな? 早く食べたかったから……。
パン完成っ!
うーん、ちょっと焦げてるけど美味しい! 焼きたて熱々は最高ね。これを入れ込むイメージをして、と。
「パンスライム、かもーんっ」
しーん。
出てこなかったわ。
やっぱり料理したものって駄目なのね。調味料がよくてパンが駄目な理由がわからないけど、仕方ないわ。
明日はカツ丼を作ってみましょう。
ダンジョンに行ってみるのもいいわね。
楽しみになってきたので、オークにもカツ丼のレシピを追加した。
【ダンジョンの中は右の部屋から行けます。しかし、覗くだけで行かない方がいいです。冒険者を倒せますか?】
「倒せない……。ありがとう。覗くだけにしておくね」
【それがよろしいでしょう。死んでしまう冒険者も多数おりますが、放置すれば跡形もなく消えます。よろしいですね】
「私みたいに無理やり連れてこられる人もいるのに? 放置するしか出来ないの?」
【すでにアンデッドはモンスター。私たちは敵同士なんですよ】
「そうだけどさ、生きて帰って欲しいじゃん……」
元ダンジョンマスター、改め『ダンさん』は何も言わなかった。きっと同じことを考えた事があったんだろう。
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