終わらせないで 2023/11/28

「はあ、このイベントも今年で終わりか」

「仕方がない。だって人来ないもの…」


 そう言って彼女は周囲を見渡す。

 人はまばらで、俺たちがサボっても、文句を言う客はいない。

 俺と彼女は何年もイベントの実行委員で参加していて、サボる要領がいいのもあるのだが…


 このイベントは町おこしで開催され、メディア等で大きく宣伝された。

 だが、初めは客がたくさん来たものの、次第にいなくなった

 まあ善戦したほうだろう


「終わらせないで、ってお願いしたら来年もやらないかな」

「ないだろ。こんなんでもカネがかかるんだ。予算が降りない。次はないよ」


 そういうと、彼女は少し考えて、

「じゃあ、君と私の自腹で!」

「なんでだ」

「いいじゃん。美少女と一緒にいられるんだよ」

「自分で美少女っていうな」


「なんで終わってほしくないんだよ」

「君と一緒に居たいからかな。楽しいし、終わらせたくないんだよ」

 彼女の言葉にちょっとドキッとする。

 それでも、今年で彼女とはお別れだ。


 俺は動揺を隠しながら彼女を諭す。

「あのな、何事にも終わりがあるんだよ。でも悪いことじゃない。終わるからこそ、新しいものが始まる。そうだろ?」

「…なに言ってんの?」

「俺今いいこと言ったよな」

 全然響いてなかった。


「終わらせて始める、ね」

 彼女は小さな声でつぶやく。

「じゃあ、パアーっと終わらせますか」

「何を?」

「それはもちろん!」


 彼女は俺の正面に向き直る。

「友達同士の関係を終わらせて、私と恋人関係を始めませんか?」

 そう言い切ると彼女は笑った。

「恋人関係は終わらるのはなしで、ね」

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