どうしたらいいの? 2023/11/21

 どうしたらいいの?

 誰か助けて―


――――――――――――――――――


 先程、私はお腹に強烈な痛みを覚え、近くにあった公園のトイレに駆け込みました。

 それが危機的状況の始まりだったのです。


 というのも、その個室には紙がありませんでした。

 人間の尊厳の危機です。

 紙のようなものが入っていないか、カバンを探りますがありません。


 解決方法を考えていると、どこからともなく声がしました。

「赤い紙いらんかね。青い紙いらんかね」

 なんてことでしょう。

 なんと妖怪、赤紙青紙です。

 赤い紙と答えると血まみれになって殺され、青い紙と答えると血を抜かれて殺される、恐ろしい妖怪です。


 もちろん私には死ぬ予定はありませんので、答えるわけにはいきません。

 だからと言って、尊厳の死は避けたいところ。

 背に腹は代えられないため、このまま個室の外に出て予備のトイレットペーパーを取りに行くしかありませんでした。


 しかしそこでも問題が起こりました。

 なんと人が来たのです。

 しかもこのトイレは、個室が一つしかないので、他の個室に入るのを待つということができません。

 しかも彼女は個室のドアを開けてくれと懇願するほど、危機が差し迫った方です。

 紙を持ってきてくれと頼んでも、彼女はそれどころではなく声が届きません。

 そして後ろからは、赤紙青紙声が聞こえます。


 もはや猶予はありませんでした。

 この状況を解決するには、時間を止めて気づかれない内にトイレットペーパーを持って来るしかありません。

 しかし私は時を止めることなどできません。

 私はパニックでした。


 どうしたらいいの?

 誰か助けて―


 その思いが天に伝わったのか、神が降臨しました。

「あのー。掃除したいんですけど、どういう状況なのかしら、これ。どうしたらいいの?」

 清掃員さんでした。


「紙下さい!」

 すべてを察した清掃員さんは、紙を投げ入れてくれ、無事個室から脱出することができました。

 また清掃員さんに、妖怪がいることを伝えると鮮やかな手際で除霊されました。

 さすがはトイレのプロです。

 ドアを叩いていた女性も無事に間に合いました。


 私は清掃員さんに礼を言い、その場を去りました。

 しばらく歩いてから、ずっと清掃員さんのことを考えていました。

 清掃員さんの勇姿が頭から離れないのです。

 この気持ち、もしかして恋!?


 私、どうしたらいいの?

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