子猫 2023/11/15

 子猫は暴れていた

 彼の中の抑えきれない衝動が、彼を突き動かしていた

 彼はもはや子猫ではない

 トラと呼ぶべきだろう


 柱で爪を研ぎ、障子に穴を開け、机の上にあるものをひっくり返す

 秩序の保たれた空間は、たった数分の間に混沌へと変わり果てた


 暴虐の限りを尽くしていると、どこからか女神が現れた

 女神は彼の名前を呼びながら、彼を捕まえようとする

 しかし彼は速かった

 女神をあざ笑うかのように、華麗に回避する

 もはや誰にも彼を止めることは出来ない


 しかし女神は覚悟を決め、魔法の呪文を唱えた


「チュール」

 それを聞いた瞬間、小さなトラは自分がただの子猫だということを思い出した


 そして子猫は女神をどんなに愛しているか、訴えながら歩み寄る

 そして女神に捕まり、説教をされたのだった


 なおチュールは出なかった

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