柔らかい雨 2023/11/06

 雨の中を歩いていた。

 折りたたみ傘を持っていたが、使う気はなかった。

 あまり雨が強くないというのもあるが、そんな気分ではないのが大きい。


 大好きな恋人と喧嘩して別れた。

 原因は向こうの浮気。

 裏切られたという事実は私を打ちのめした。


 雨が降ってきても、傘を出す気力が湧かなかった。

 土砂降りであれば、いっそ清々しくなるのだろうが、ずっと弱い雨だった。

 濡れるか濡れないかというような、柔らかい雨。

 もしかしたら雨が慰めてくれてるのかもしれない。

 

 おせっかいと感じるが、きっと気の所為なのだろう。

 だけどそんな考えに至ってしまった自分に、ちょっとだけおかしくて笑ってしまった。


 気がつくと雨は止んでいた。

 雲の切れ間から陽の光が差し込み、大きな虹が架かっていた。

 あまりのおせっかぶりに、おかしくなってしまう。

 そして晴れていく空のように、私の気持ちも晴れ渡っていく。


 新しい恋を頑張ろう。

 そう思うのだった。

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