焦がれ首

十余一

むかしばなし

 時は文政、所は総州三前口みさきぐち

 半島の東端に位置するこの街は雄大な外海そとうみに臨み、豊かな漁港として、また各地から江戸へ物品を運ぶ中継港としておおいに栄えた。

 重要な地ゆえ、支配は上州の親藩に委ねられる。飛び地の十七箇村、五千石。当地に派遣された本庄直之進なおのしんは、共の者を十数人ばかり率いて屋敷へ入った。若くしてこおり奉行ぶぎょうとなった彼は公明正大であろうと努め、しばしば腹心を引き連れ領内の村々を巡視したという。

 そうして平らかな日々が続いた。しかし数年の後、奇妙な出来事が起こる。

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