陰陽師先輩と学ぶ、『誰が滅ぼした室町幕府』
辺理可付加
陰陽師先輩
「室町幕府を滅ぼしたのは、信長じゃないって知ってた?」
大学構内のカフェ、テラス席。コーヒーを
茶髪エアリーボブの先輩が意味不明なことをおっしゃる。
「それは、なんですか? 『結果的に信長の手で幕が引かれただけ。原因は別のヤツに』的なアレですか?」
「違う違う」
先輩は人差し指を立てて振る。
まぁオレだって付き合いができてそれなりに経つ。違うんだろうなってのは言われなくても分かる。
彼女は指を立てた右腕の肘をテーブルについて、身を乗り出す。
近くなる顔。美人なのにな。これで話さえまともなら。
「
そう。なんでも陰陽道の話にさえしなければ。
彼女、
日本史の教員志望なので、将来授業で話す小ネタを集めるために
『どなたか、歴史に詳しい方はいませんか?』
とサークルメンバーに聞いてまわった結果、紹介されたのが彼女だった。
ただ、先輩がオレの求めていた方向での『詳しい人』だったか。それはアダ名や冒頭で分かってもらえると思う。
かくしてオレは、単元が進むたびワケの分からん陰陽トークを聞くハメになった。
ずるずると本日の室町幕府成立まで。
ちなみに先輩は複数の人種的ルーツがあるらしい(だから名前も長くて覚えられず、陰陽師先輩と呼んでいる)
なので見た目にはあまり、陰陽道とかいう感じはない。茶髪だし。
そもそも民俗学どころか医学部だし。
「聞いてる?」
「今日もおキレイですね」
「聞いてないんだね」
騙されてくれないか。やはり見た目以外、全体的に可愛げが足りない人だ。そこが知的ステキとなる人もいるかもしれないが。オレとか。
でなければ今ごろ、紹介してくれた先輩の手前もなく一期一会にしていたことだろう。
「聞いてます聞いてます。興味あります。で、それじゃあ結局、誰が室町幕府を滅ぼしたんですか?」
「それはねぇ」
先輩はニヤリと笑う。この上品で、イタズラっぽくて、少し性格悪そうな微笑み。これが意味不明陰陽トーク以外で聞けたなら。
「三代将軍、
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