第32話 星華の独白

 アタシは生まれつき、運のいい人間だと思っている。

 他人にそう言うと、聞いた全員が両親に捨てられた子どもが何を……という顔をする。


 でも残念、アタシは両親に捨てられた記憶なんてないから、関係ないの。

 孤児院に引き取られて、その孤児院が経営破綻した。その後、ヨーロッパに売られたのも、運がよかったと思っている。


 強がりじゃない。虚勢じゃない。逆張りでもない。

 運っていうのはね、人生の中で上限が決められている。

 だから今まで最悪だった人生も、ここからはラッキーしか起こらない。


 ほら、そう考えたら、アタシは十分に運のいい人間だと思わない?


 アタシはホテルのスイートルームから都会の夜景を見下ろした。

 両親が生まれ育った国、日本。


 最低な国だと思っていたけど、こうして社会の歯車共が生み出す光を見るのは悪くない。

 真面目に働いて真面目に生きて真面目に死ぬ。一度きりの人生に、肩肘張り詰めて生きる人種。あぁなんてかわいそう。そんな人種が生み出す光は皮肉にもとっても綺麗。そういう意味では、この国は最高だ。


 盗んだ高級車を売って、ホテル暮らし。

 貯金の底が見え始めたら、ターゲットが現れた。


 あぁ、アタシって本当に運がいい。

 テーブルに置いた銃を持ち上げ、口角が上がった。

 そうね、アタシがやることは1つ。この引き金を引くだけ。


 ちょっと邪魔してくる奴は、上手く騙して協力者にできた。

 あとはお楽しみの殺戮タイム。

 カルマーでやたらと持ち上げられ、比較され、アタシが虐げられた元凶であるエルサ・イェルソンを殺す。


 表向きはカルマーのためにってことになっているけど、本当はアタシの憂さ晴らし。それで評価も上がるなら一石二鳥だ。

 どんなに美しく、強い彼女でも、銃には勝てない。勝てるはずがない。


 この前は小型拳銃しか持っていなかったから負けたのであって、アタシのフル装備で負けるはずがないんだ。

 殺して、評価が上がったらまた殺して、評価を上げて、人生を豊かにする。


 カルマーの1番は、アタシだって証明する。

 これからの人生、順風満帆。

 えぇ、そうよ。



 そうでなければおかしいほどに、アタシは不幸だわ。

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