21.飾り

 最近の本屋には雑貨や小物も置いているようで、それはレジ前近くの小さな机に並んでいた。白い台紙の上に、細い細い金鎖と珊瑚のような赤い石が並んでいる。もちろん、イミテーションのプラスチックだとわかってはいたが妙に目が離せない。

 しばらく悩みはしたものの、結局わたしは本の中に混ぜ込んで会計をしにレジへ向かった。



「珍しい物を買ってきたじゃないか」


 うっかり机の上に広げていた荷物の中からそれを目ざとく見つけ、ミシルシ様が揶揄う。隠す必要はないとわかっていても、何となくバツが悪くて誤魔化した。


「別にいいでしょう」

「照れるな。悪くない、結には赤は似合うと思うぞ」


 何故か自慢げな言い振りが余計に腹立たしい。

「……わたしのじゃないです」


 一瞬だけ考えて、すぐに意図を察した顔がにやりと歪む。


「何だ何だ、私への貢物か。ならそう素直に言えばよいものを」


 先程よりも興奮気味に、何なら若干小刻みに揺れながら、ミシルシ様はきゃらきゃらと笑う。冷やかされているのか、単純に喜ばれているのか判断しきれずわたしは顔を顰めた。


「ほら、早くつけておくれ」


 嬉しげにせがまれれば、意地を張るのも馬鹿らしくなって封を切る。台紙から外そうと手に取ったところでようやく、自分の失敗に気がついた。

 イヤリングでなくピアスだったのだ。何とも初歩的な間違いに恥ずかしくなる。


「構わんぞ、結。今更穴のひとつやふたつ増えたところで支障ない」


 事もなげにそんなことを宣うのでわたしの方がギョッとした。あの綺麗な耳に、飾るためとはいえ傷をつけるなんてとんでもない。ピアスホールとはいえ怪我は怪我じゃないか。


「嫌ですよ。絶対駄目です」


 つまらないと口を尖らせるミシルシ様をよそにピアスをしまう。


「捨てるなよ」


 こっそり処分してしまおうと思ったのに、先読みで釘を刺されてしまう。もう私のものと主張されるのに、やはり悪い気はしなかった。

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