第24話
アビスゲートから黒い礫が飛ぶ。
ガッ!
ドカッ!
飛び出た黒い礫が堕天聖女を襲う。
「グギヤアァァアァァアァァァ!!!!」
ダメージになっているのか悲鳴をあげる堕天聖女。
その体はどんどんボロボロになっていく。
ゲームで言うなら部位破壊、というやつみたいに、体がボロボロになっていく。
そんな様子を見ていて俺は心配になり声をかける。
「簡単に倒れてくれるなよ」
俺はそんな堕天聖女に言った。
「強敵とは粘り強くあって欲しいのだよ」
悪に立ち向かう主人公のように立ち上がって欲しい。
「すぐに倒れる主人公がどこに居る?」
どんな攻撃を受けても立ち上がり続ける主人公。
物語の主人公とはそうでなくてはいけない。
「主人公になってみろ堕天聖女っ!」
「グギャァァァァァァァァ!!!!」
アビスゲートから降り注ぐ石の礫から身を守るようにしている堕天聖女。
どうやら耐久値というのはそこまで高くないように見える。
だが、その状況でも俺をギンッ!とした目で睨んできた。
こいつ、なにかして来るつもりだぞ?!
「そうだっ。なにかしてくれよ堕天聖女っ!」
このまま一方的にすり潰すのは気持ちのいいことだ、爽快感がある。
しかし、楽しくは無いっ!
「俺を楽しませてくれっ!堕天聖女!」
「グギャァァァァァァァ!!!!」
【呪い】
堕天聖女から放たれた呪いはアイリスのヒールベールによって弾かれる。
「効かないぞ堕天聖女!他に攻撃手段はないのか?!」
聞いてみると堕天聖女は次の行動に入った。
詠唱を始めていた。
そして、唱える魔法は
「【ファイアバレット】」
今度は俺の上空に何十もの弾丸か現れた。
そして、俺に向かって射出される。
「そうこなくてはな!堕天聖女!」
やばい!
状況はヤバいのは分かっている。
しかし、困難を乗り越えた先に、達成感はあるのだ。
ドン!
ガン!
俺は降り注ぐ弾丸の雨をかいくぐっていく。
「楽しいぞっ?!堕天聖女!」
ドーパミンがドバドバ。
アドレナリンがドバドバ。
生きるか、死ぬかの境界にいる時が1番楽しい。
ゲームとは俺はそう思っている。
「がっ!」
しかし、弾丸の一部が俺の腕を貫いた。
俺の視界に赤みがかかる。
「体力を少し削られたようだな」
このまま当たり続けたらやばい気がする。
だから一生懸命に避ける。
もちろん、この弾丸の数々にも揺らぎが存在する。
射出されるタイミングも場所もバラバラだ。
これを周回でやらされるなら何だこのクソゲーと叫ぶだろうが、こいつはユニークモンスター。一度倒せば終わりだ。
だから楽しめる。
弾丸の雨をかいくぐり俺は堕天聖女へと近づいて行った。
「ギガッ?!」
俺と堕天聖女の間の距離は完全に詰まっていた。
そして、俺の行動の方が早い。
俺は既に剣を抜いているからだ。
「こんなものか、堕天聖女」
俺は堕天聖女に向かって剣を振った。
ザンッ!
脇腹のあたりに入り込む刃。
それを俺は思いっきり振り抜いた。
右脇腹から左脇腹まで、刃は駆け抜けたっ!
「ギガァァァァァァァァァァァ!!!!!」
ドサッ。
上半氏と下半身に別れた堕天聖女。
その体を地面に落とすことになった。
「フシュゥゥゥゥウワゥゥゥゥ」
口から黒い煙を垂れ流す堕天聖女を見下ろす。
「俺の勝ちだ堕天聖女。楽しかったよ」
単純な戦闘難易度だけで言うならブラッディフェンリルの方が明らかに強かったし、絶望感があった。
しかし、こいつとの戦闘も楽しめた。
「お前は良モンスと言ったところか」
そんなことを言いながら俺は堕天聖女に言った。
「ここにいたのが俺でなければ勝てたかもしれないな。それと、お前の敗因を教えてやろう。俺を近付かせてしまったこと、だな」
こいつの進化前は魔法特化のリッチである。
そしてそれは進化後も変わらない。
となると、魔法を主軸にして遠距離戦を挑まなくてはいけなかったのだろうが、こいつはそれが出来なかった。
「フシュゥゥゥゥウゥゥゥゥ」
堕天聖女はまだ黒い煙を口から履いていた。
それがあたりに充満していく。
(この煙はなんだ)
そう思っていた時だった。
アイリスから声が飛んでくる。
「アマネ様!モンスターの大群が!」
「むっ」
俺はアイリスの言葉にミニマップに目をやった。
すると、そこに映っていたのは。
「真っ赤っかじゃないか」
ミニマップを覆うほどの敵の数々。
俺が呟くと堕天聖女は喉を鳴らして笑った。
そして言った。
「シネ」
「人の言葉が分かるのか。貴様は」
俺はそう言って堕天聖女から目を離すと周囲を見た。
すると、俺の視界に入ってきたのはもちろん、モンスターの大群。
「グギャァアァァァ!!!」
「ギィィィィィィ!!!!」
ワイバーン。ウルフ、ゴブリン。
色んな種類のモンスター達がお互いを食い、倒しながらそれでも俺に向かって進んでくる。
俺はそれを見て堕天聖女に言った。
「これが最後の切り札ってわけか」
「シネ」
消え入りそうな声でそう言ってる堕天聖女の前で俺は呟いた。
「下らんな。俺はお前と戦いたかったのだが、最後は物量戦に頼るしか脳がないのか」
俺はそう言って呟いた。
「開け、アビスゲート」
モンスターの大群の上にアビスゲートを開いた。
天を覆うくらいの巨大な大穴。
「……!!!!」
堕天聖女の顔に驚愕の色が浮かんだ。
俺は呟いた。
「真の物量戦というのをお見せしよう」
黒い雨が降り注ぐ。
黒い雨が降ったあとはモンスターが砕け散る。
緑色、赤色、いろんな色の血液が地面を濡らしていく。
そして、最後に残るのはもちろん、俺と堕天聖女のみ。
「さすがにもう隠しだねはないだろ?堕天聖女」
ニヤリと笑って俺は剣の先を堕天聖女の顔に向けた。
「もう終わらせてやろう。堕天聖女。俺の経験値になれよ」
グッ!
剣をつき入れた。
ブシャッ!
堕天聖女の頭には簡単に刃が通り、俺の体に返り血がかかる。
ビチャッ!
びちゃびちゃ!
いつかのように血まみれになった。
そして、右下には通知が届いた。
ピコっ。
実績:眠れ!魔女姉妹!
進行度:2/2
内容:残忍な魔女2体の撃破
【実績解除の報酬をプレゼントボックスに送りました】
【称号:魔女殺しを手に入れました】
【2兆ジェルを獲得しました】
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