第6話 タルバの街その2

「おまたー」


ユグドラシルに向かうため黒い通路を通りながらシステマに声をかける。


「日本はもういいのですか?」

「もういいよ。いる意味完全になくなったわ。俺はこの世界で生きていく」


ゲーム世界で稼げるって分かったらもう日本にいる意味ない。


そんな訳でタルバの街の広場にとうちゃく。


これからどうしようかなーなんて考えてると。

ちょいちょい


「きみきみ」


肩をつんつんされて声をかけられた。

振り向くとそこにいたのは18歳くらいの男だった。


「今ゲートから出てきたってことは日本人だよね?」

「ゲート?」


聞き返すと鼻で笑われた。


「ゲートも知らないの?」


そう言って説明してくれた。


俺たちが通ってくるあの黒い道をゲートと呼んでいるらしいけど。

そんなもん知るかっ!


「初心者?僕は高村って言うんだけど。うちのパーティ初心者歓迎中だよ」


そう言って自分の後ろを指さす男。

そこには若い男女がいた。


「いらないよ」


俺はそう言って歩き出す。

誰かとつるむつもりなんてないし。


そうして俺はギルドへとやってきた。


カウンターに向かうと昨日の受付嬢がいた。


「あっ!昨日の凄腕さん!」


俺の事を覚えていたようでそう声をかけてきた。


「誰のことかな?俺は知らないよー?」


あくまでシラを切りながら俺は本題について受付嬢に話す。


「ねぇ。ユニークモンスターについての情報を知りたいんだけど」


そう聞くと受付嬢はこう言った。


「ユニークモンスターの情報に関しては冒険者ギルドに登録している方でないとお教えできないのです」

「なぜ?」

「ユニークモンスターは貴重な存在です。国として守っている種もいます。そんな存在に関する情報は簡単には話せないのです」


ということらしい。


まぁいずれ冒険者ギルドには登録するつもりだったし、いいか。


「分かった。登録をお願い出来る?」


必要な情報などを教えて俺は冒険者登録を行うことに成功した。


そして冒険者カードを受け取った。

Eランクスタートの冒険者カードだ。


一律でEランクスタートとなるらしい。


で、Eランクで受けられるクエストと言えば薬草集めだったりするらしい。


今現在日本人はこういうのを受けている人が多くて、これの時給が50円とからしいのだ。


モンスターの討伐以来などは最低限Dランクからでユニークモンスターもここからの登場になるらしい。


んで、情報を聞くのもとりあえずDランクに上がる必要があるそうだ。


「どうにかしてDランクに上がったりは出来ないのか?」


俺は受付嬢に聞いてみたが返事は案の定だ。


「申し訳ございません。全員共通でランクポイントというものを溜めて、規定値に達したら昇格試験を受けるという形になっています。特別扱いはできません」


「……そうか。ひとついい?」

「なんでしょうか?」

「どれかのユニークモンスターが倒されそう、という話はある?」

「今のところは無いですね」

「そっか。ならとりあえずは安心だ」


最前線って呼ばれてる一条達でもユニークモンスター関係はまだ手を出せてないそうだ。


(落ち着いてランクを上げようか)


そう思った時だった。


「あっれー?」


声が聞こえた。

振り返るとそこにいたのは高村だった。


「初心者くんじゃん」


受付嬢は俺に声をかけてきた。


「ひとつだけランクポイントを溜める工程をスキップできる方法があります」

「それはなに?」

「これから昇格試験を受けるパーティのメンバーになって一緒に昇格試験を乗り越えるという方法です」


つまり、ここでそれを言ったってことは。


「あいつはその昇格試験を受けるってこと?」

「はい」


俺が退いてみると高村は受付嬢に話しかけた。


「アマンダちゃん」


受付嬢のことをアマンダって呼んでた。

それが名前なんだろう。


高村はそれからこう言った。


「昇格試験受けたいんだけどDランクの」


(今から薬草集めなんてやってられるか!)


俺はゲームとかでも薬草集めなどのアイテム集め系の任務が1番嫌いだった。

だからやってられない。


ここは高村に頭を下げようと思う。

さっそく前言撤回することになるが、効率の前では余裕で前言撤回しよう。


「高村」


話しかけると高村は俺を見て言った。


「高村"さん"な」


そう言われて俺は訂正した。


「高村さん。俺をパーティに入れてくれないか?初心者歓迎なんでしょ?」


そう聞くと高村は言った。


「え?今から昇格試験受けるのにガチ初心者連れていくわけないでしょ」


ニヤニヤ笑いながらそう言った高村。


アマンダは何も出来ないのか作業を進めて昇格試験を発注していた。


それを受ける高村。


俺を見てニヤニヤしていた。


「アーマーも着てない初心者くんなんて連れて行けないよ。僕らは今から初めての討伐試験である【ゴブリン】の討伐に行くからね。アーマーの装備の仕方を覚えてから声かけてよ?迷惑だからさぁ」


はっはっはっ。笑って高村と男は歩いていった。


女の子の1人が俺を見ていた。


「あ、あんまり気にしないでくださいね。あんなの気にしなくていいですから」


そう言ってくれたので答える。


「別に気にしないよ」


俺はそう言ってから女の子に言った。


「よくあんなのとパーティ組む気になれるね」

「私このパーティしか入れてくれなかったから」


そう言って女の子は名乗ってきた。


「私は黒木って言います。次会ったらよろしくね」


そう言って高村を追いかけていった。



俺は高村の背中を見て心の中で呟いた。


(あいつ泣かす)


そう思ってギルドを出ようとしたらアマンダが話しかけてきた。


「昨日は装備着てましたよね?」


昨日はくさい装備を着てたのを覚えてるんだろう。


「くさいから脱いでる」


そう言うとアマンダは言った。


「洗ってもらいませんか?」

「洗う?」

「はい。臭いは落とせますよ」


そう言ってアマンダはカウンターから出てきた。


「ご案内しますよ」

「えっ?仕事は?いいの?」

「冒険者のお世話も仕事のうちですよ」


そう言ってくれたアマンダといっしょに俺はギルドを出ることになった。


向かった先は装備屋だった。


俺が向かうと装備屋の店主は口を開いた。


「らっしゃい。用件は?」

「装備が臭いからにおいをとって欲しいんだ」


ゴトッ。

取り出した装備をカウンターに置く。


ジロっとそれを見た店主。


「3万だな」


(もっと取られるかと思ったがそんなものなんだな)


この世界の相場は分からないが今の俺はかなり金に余裕がある。


ポンと出すことにした。


そうすると消臭作業に取り掛かる店主。


それから話しかけてきた。


「珍しい装備だな。こんなものを持ってるなんて凄腕の冒険者だと思うが、見ない顔だ」


やむを得ない事情があったんだが、それでもこの世界で死体漁りっていう行動はどういう意味があるんだろうな。


俺にはまだ予想もつかないし適当にはぐらかしておくことにしよう。


「貰ったものだよ。実力はルーキーなもんで、価値が分からなかった」

「そうか、教えておくが装備は大事にした方がいいぜ」


そう言ってから店主はこう切り出してきた。


「そう言えば装備コストについては理解してるか?」

「ん?装備コスト?」


初めて聞く言葉に俺は首を傾げた。


するとシステマの言葉が頭に響いた。


「装備コストについてのチュートリアルインストール」


ブーーーン。


そんな低い音が鳴って俺の頭に情報が入ってくる。



【装備コストについて】

・この世界の装備には重さが存在する。

・コスト=重さ

・他のゲームと違って装備コストがオーバーしても装備できない、ということはないがデバフがかかる。

・そのため装備コストには気をつけて装備をすること

・このゲームでは装備は外してもいい。装備無しによるメリットも存在する。とにかく、体が軽くなり機動力は上がる。

・敵から逃げる時は装備を置いて逃げるのもあり



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