第4話 タルバの街その1
シュゥゥゥゥゥ。
ワープ装置を使いワープしてきたのは街の広場だった。
広場の中心には噴水があって沢山の人が広場に集まっていた。
「ずいぶん賑わっているな」
「街の中心ですからね」
システマがそう答えてきた。
「こういう雑談は権限がなくてもできる、ということかな」
「はい」
システマの正体とか色々気になる事はあるが答えてはくれないだろうし、なによりとりあえず腹減った。
飯を食いに行こう。
そうして歩きながら俺は自分の所持金を見ることにした。
今の俺の所持金は【2兆ジェル】。
さっきのダンジョンを攻略した実績でもらったもの。
「このジェルというのはやはり通貨なんだよな?」
「はい」
システマの返事。
やはりこの国の通貨か。
円とドルの関係みたいに1円100ジェルくらいになるのかな?
円と似たような価値なのなら俺は今、200億円持っているようなものだろうし、相場はそれくらいな気がする。
まぁ、とりあえず酒場と行きたいところだが、先にやりたいことがある。
「ギルドに先に向かうか」
ここに来るまでにシステマから聞いた。
亡くなった冒険者の冒険者カードはギルドに返すことが出来るそうだ。
そして、返せば謝礼金が出るらしい。
その謝礼金目当てに返しに行くわけだ。
「それにしてもいきなり若干憂鬱なイベントだなぁこりゃ」
こんな憂鬱な始まり方するゲームなんて普通ないよなぁとか思ってるとシステマが答えてくれた。
「高難易度というのはこういうことです。いつ人が死んでもおかしくないのです」
「肝に銘じとくよ」
そう答えながらシステマに質問。
「俺にとってあの奈落遺跡はそこまで難易度が高くなかったけどさ、なんで高いって言われてるの?」
その質問には何も答えないシステマ。
よく分からんやつだ、とか思いながら俺はそのままギルドへ向かった。
場所の案内だけはしっかりとしてくれた。
「あれです。剣と盾がトレードマークの看板がありますよね?」
システマが目を向ける先には確かにそんな看板がある。
あれが目印か。
これからは迷うことはなさそうだ。
そう思いながら中に入る。
中にはごつい鎧を身につけた奴らがいた。
そんなヤツらを尻目に俺はカウンターまで歩き受付嬢に話しかけた。
「ども。死亡した冒険者カードの提出に来たんだが」
そう言うと察したような顔をして受付嬢が言った。
「どこで拾いましたか?」
「奈落遺跡」
答えると受付嬢は聞いてきた。
「大切な人には会えましたか?」
「え?」
キョトンとしてると受付嬢は少し慌てた様子で聞いてきた。
「奈落遺跡は故人と会えるんですよね?」
「そうなの?」
「はい。そういう噂がありますよ」
その話を聞いて俺はアビスキングのことを思い出していた。
死者使役のことだ。
あれで甦った故人に会える、ということなのかもしれない。
俺がグランと言うやつのギルドカードを提出すると受付嬢は言った。
「この人達は恋人同士だったみたいですね」
グランと別のやつのカードを見比べる受付嬢。
そのまま処理を進めていく横でシステマが口を開いた。
「アビスキングは故人を盾にしてきます。大切な人を盾にするのでグランはアビスキングを攻撃出来なかった、そしてあのダンジョンで命を落としました」
と、補足してきた。
なるほど。そういうことだったのか。
(こちらからは攻撃出来ないから負けるしかない、ってことなのね)
まぁ俺はそんな大切な人なんていないから問答無用で斬り殺してきたけど。
そんな話を聞きながら受付嬢を見ていると、急に受付嬢は我に返った様な顔をして聞いてくる。
「そういえばよく奈落遺跡から帰ってこれましたね」
「別に大したこと無かったよ。俺にとってみれば」
そう答えると受付嬢は聞いてきた。
「そういえば見かけない顔ですね。他国の冒険者ですか?」
そう聞かれて俺は答えた。
「俺冒険者ですらないよ」
答えると受付嬢は数秒沈黙して。
「え、えぇぇぇぇぇぇぇぇぇ?!!!冒険者じゃないっ?!!!」
驚いてた。
何をそんなに驚いてるんだろう?
不思議だ。
「奈落遺跡はトップクラスの冒険者ですら帰ってこない事で有名なのに」
と俺を見て呆然としていた。
そんなところから無名の俺が帰ってきたから驚いてるのか。
プロの登山家が命を落とすような山から素人が帰ってきたようなものなのだろう。
そりゃ驚くよな。
(これからは言動に気をつけた方がいいかもな)
と、そう思ったが、今回に関してはもう口が滑ってしまっていた。
「あ、あの!冒険者登録しませんか?」
勢いよく聞いてくる受付嬢。
「なんで?」
「あると便利ですよ。冒険者カード!」
ずいっ!と身を乗り出されて、一際大きい声で言われる。
その勢いに戸惑う俺だった。
しかも声が大きかったせいでギルドにいた人たちから注目されてるよぉぉ!!
「あ、あはは。ま、また今度にするよ」
俺はそう言って慌ててギルドを出ていくことにした。
そして、そのままの足で今度は酒場に向かうことにした。
そこで気付いた。
「うわっ。謝礼金もらうの忘れてた」
その言葉にシステマは答える。
「実は1枚1万ジェルくらいですよ。提出したのは20ほどだったので20万ジェルですよ。はした額です」
って言われた。
20万ジェルがはした金なのか。
そんなことを思いながら俺は酒場に入った。
ウェイターに席に案内されて流れでメニューを見た。
ボケーッとメニュー表を確認する。
【メニュー表】
・千年鶏のからあげ 300ジェル
・チャーハン 700ジェル
・香草焼き 800ジェル
「まぁそんなもんだよ……なぁ……」
って呟いてからメニュー表を2度見。
「って、ん?」
なにか引っかかるよな。
引っかかる原因が分かった。
なんと言うか、ものの値段が日本と変わらない位の数字だから、である。
「量が少ないとか、か?」
そう思いながら俺はウェイターを呼んでとりあえず上三つのメニューを頼んでみた。
「ご提供は10分ほどになるかと思います」
との事らしいのでシステマと会話しながら待つことにした。
「おいおい、まさかとは思うが。1円=1ジェルくらいなんだろうか」
「そうですよ」
あっさりと頷いたシステマ。
聞き間違いかと思った。
「おいおい、それじゃなんだ?今の俺は2兆円持ってるようなもんなのか?」
とほうもない額に現実感が湧かない。
2兆円?とは?ってなってる。
あまりに現実感がなさすぎて俺はシステマに話を振った。
「今日はとりあえずこれ食って日本に帰ろうと思ってるよ」
俺がこっちにきたのは日曜日の午前0時。
んで18時間経過してるとなると日曜日の18時になってることになる。
んで、あれから何だかんだ時間が経過したし飯食って帰るとなると日本に帰るのは20時くらいだろう。
慣れないことをしてどっと疲れてるし、早めに寝たいのだ。
「天音様のご自由に」
そう言われた。
別にこの世界にずっといろってわけじゃないらしい。
そう思ってるとそのときウェイターが食事を持ってきた。
ゴトッ。
皿を置きながら口を開く。
「お待たせしました。ご注文の品でーす」
そう言って食事を置いていった。
どーんと置かれた食事の量は日本で見た量と変わらなかった。
「まじかよ」
確信した俺は今ガチで2兆円持ってるような感じらしい。
システマに目をやるとシステマは言った。
「はした金だったでしょう?」
うん。
はした金だったわ!
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