人類がゲーム世界に行ける能力を授かったが、「たかがゲーム」と馬鹿にして真面目にやらなかった奴ばっかだったけど、真剣にやった俺は地球でも成り上がった。でも地球の生活はどうでもいいのでほとんど帰りません。

にこん

第1話 ゲーム

土曜日の深夜0時前。

日曜日になるかならないかくらいの時間。


父さんが部屋にやってきた。


「おい、天音、聞こえてるか?」


扉越しに聞こえる声で耳が痛いが返事をする。


「なに?」

「月曜日は登校する日だったよな?」

「うん」

「しんどいだろうけど、約束は守ってくれるな?」


その返事には答えを返さない。


父さんは歩いていった。


俺は不登校の引きこもりだった。


とは言え完全に不登校ってわけじゃない。

でも、ほとんど引きこもっている。


たまーに登校する日を決めて登校するくらいで後は基本不登校だ。


ちなみにその決めた日が月曜日だった。


本来は先週金曜日だったんだが、あいにく体調を崩してしまった。


そして、今も。ちょっと体調が悪い。


ちなみに不登校になった理由はイジメだった。


俺はそこそこ酷いイジメを受けてた。

イジメをされる原因になったのは、虐められてる奴を助けたからだった。


ただそれだけで今度はイジメの標的が俺になった。

しかし、誰もそんな俺を助けなかった。


だから俺は不登校になった。


「はぁ……クソが」


常々思う。

なんであんなクズみたいなヤツらがのうのうと生きていて俺は不便な思いをしないといけないのか、ということだ。


まぁ考えても仕方ないか。


憎まれっ子世に憚る、と言うしな。

それにいわゆる【底辺校】ってやつに入学してしまった俺も悪いよな。こんなところにいる奴の民度なんて入る前から分かってるのに。


で、正直こんなとこに入ったことを後悔してる。

中学生の頃もっと勉強してれば、って。


でも俺は勉強が苦手だった。


っと、そんなことはどうでもいいか。


「そろそろ、日付変わるな。ログボも貰えるし、ゲームしよ」


寝転んでいたが立ち上がってデスクに向かおうとしたが、その時だった。


ギン!!!!!


「のわっ?!」


鋭い痛みが左手を襲った。


例えるなら、針で突かれてるような感じ。


そんな痛みがじわーっと左手の甲全体に広がった。


そして、やがて痛みは止まった。


「なんだよ」


俺は呟いて自分の左手の甲を見た。

するとそこには


幾何学紋章が浮かんでいた。


まるでタトゥーみたいだった。


「なんだよこれ」


呟くと今度は頭の中に声が響いた。


『ゲームを授けました』


「ゲーム?」


フラフラとしながら頭を抑えて俺は呟いた。


「なんなんだよこれ」


手の甲をゴシゴシ擦ってみたがこのタトゥーは消える様子はない。


俺がそうしていると今度はありえない事が起きた。


ブゥン。


目の前に。



黒いモヤモヤした煙(?)みたいなものが現れた。



「な、なんだよこれ?え?」


驚きながら俺はそれを見ていた。


なんていうんだろ。


ゲームとかに出てくる悪役が移動用に使う穴みたいなものだ。


それが目の前にあった。


「ははっ。俺、悪役になっちまったのか?」


いや、まさかな。


そんな冗談を思いながら俺は黒いモヤモヤに手を伸ばしてみた。


するっと、すり抜ける。

どうやら固形ではないらしい。


「入ってみるか」


漫画やアニメではこの中に入れることになっている。


そして、別の場所に繋がっている。


「ごくり」


唾を飲み込んで緊張しながらも俺はその中に入っていくことにした。


中に入ると黒い通路が広がっていた。


深夜に明るいものを見たくなかったから黒い通路で助かった。


「しっかし、なんだこの通路。どこまで続いてるんだろうな」


果てが見えない。


そんな通路を歩いていく。


すると、今度またありえない事が起きた。


【ユグドラシルへようこそ】


視界の真ん中に文字が浮かび上がってきた。


「マジでなんなんだよこれは」


いきなり出てきて俺は後ろに下がった。


「なんだよこれ。ビビらせんな」


愚痴りながら文字に向かって手を伸ばす。


しかし、こちらもまたするっとすり抜ける。


「さっきからなんなんだよ、これは」


意味の分からないことが起きているせいで頭が混乱している。


だがまぁ、とりあえず落ち着こう。


すーはー。


深呼吸して前に進むのを再開する。


すると、文字が切り替わった。


【ステータスを授けました】


「ステータスぅ?」


呟くと目の前にまた違う文字が出てきた。



名前:古賀 天音

スキル:【強制ログアウト】


属性:主人公


といったようなことが出てきた。


「なんだよこれは。俺の言葉に反応したのか?ってか。ははっ。まるでゲームみてぇ」


そう呟くと俺の質問に答えるように文字がまた切り替わる。


【この先はユグドラシル。ゲームの世界です】


「……」


普段なら何を言ってんだこいつ。

とか思うけど状況が状況だ。


「信じてみてもいいかもな」


そう呟くとまた文字が切り替わった。


【スタート地点を選択してください】


ズラーっと選択肢が並んだ。


なんとか平原とかなんとか王国とか、よく分からない項目が並んでいた。


【スタート地点は変更ができません。慎重に選択してください】


と書かれたウィンドウの下の方には追記があった。


【※このスタート地点を選択する時にしかいけない地点もあります。慎重に選択してください】


と言われましても。


どこが難易度高いのか、とか低いのかとかいっさい分からない。


しかし、この場にそれを知っていると思われるやつがいるはずだ。


それは、このウィンドウを表示しているやつ。


「お前質問には答えられるの?」


聞いてみるとまたウィンドウの文字が切り替わる。


【ある程度は】


「ならさ、これから向かう世界のことを詳細に教えてよ」


そう聞いみるとウィンドウが答える。


【その権限は付与されていません】


(権限は付与されていない、ということはこいつより上の存在がいるってことなのか?)


頭の中でそう考えてから俺は次の質問に移ることにした。


「さっきちらっと見えたけど【強制ログアウト】ってのはなに?」


【生命活動保護機能でございます。これから向かう先はゲームの世界。あなたはゲームのプレイヤーです。ゲームで死ぬというのはありえない事です。ですので向こうの世界で許容値を超えたダメージを受ければ元の世界に強制的に返されるというスキルです】


(ゲームの世界では死なない、か。ゲームで死んだから現実で死ぬなんてのは確かに意味が分からないよな)


俺は次に現状の確認をすることにした。


ステータスの確認だ。


さっきはちょっとしか確認できなかったがもっとステータス項目というのはあると思う。


たしか、ステータスの出し方は


「ステータス」


って呟けばいいんだっけ?




名前:古賀 天音

スキル:【強制ログアウト】


属性:主人公


レベル:1

攻撃力:1

防御力:1




と出ていた。

どうやら向こうの世界ではレベルというものが存在するらしい。


ということはおそらくだが【経験値】と呼ばれるものもあるだろう。

そこまで考えてから聞いた。


「向こうの世界でのレベルっていうのは絶対的なもの、という認識でいいか?」


【はい。向こうの世界はレベルが全てを支配する世界】


なるほど。つまりはレベルを上げれば最強になれる、ということでいいだろう。


俺はそこまで聞いてからこう聞いた。


「経験値と呼ばれるものがあると思うが、これは倒すものが違えば獲得経験値量もとうぜん違うんだよな?」


【はい。強い相手を倒せばより多く貰うことができます。なお、相手を倒す事だけが経験値を得られる行動ではありません】


「その経験値も強い相手であればあるほど獲得量が上がる?」


【はい】


そこまで聞いて俺は答えた。


「分かった。一番難しいところに行こう」


【でしたら、最高難易度のダンジョンである奈落遺跡という場所があります】


「それは?」


【通常プレイではたどり着くことができない場所です。難易度も世界トップクラスです。出現するエネミーも世界トップクラス】


と、答えられた。


「どんな相手が出る?」


【権限がありません】


「だろうと思ったよ」


俺はそう答えてからこう言った。


「奈落遺跡のスタートでいい。二言は無い」


また目の前に文字が出た。


【これは個人的な疑問なのですが、何故高難易度の場所へ行きたがるのですか?】


「決まってるだろ。強いヤツと戦えばそれだけ多くの経験値が入る、ゲームの常識だ。つまり俺は強くなりたい、それだけさ」


最速で強くなる方法は最速のレベリングを行うこと。


俺はそれだと思ってる。

だから最も経験値効率のいいところを選択する。


【それでもここまで思い切れるのはすごいと思いますが】


「強制ログアウト機能の存在がでかい」


負けても死にはしないんだ。


なら、高難易度一択と俺は思う。


そう答えるとウィンドウは答えた。


【とりあえず、この道を真っ直ぐ進んでください。出口は奈落遺跡に繋がっています】


俺はそのままこの道をまっすぐに進むことにした。


黒い道。


それは俺のこれからのゲーム世界の難易度を暗示しているような気がした。


ただの思い込みかもしれないけどね。


さてと、ここまで来て俺は思った。


「なぁ、聞いてるだろ?」


【なんでしょう?】


「お前は何者なわけ?」


【プレイヤーの皆様をサポートするシステムでございます】


普通ゲームのシステムっていうのは無機質なもんだと思うが、どうやらこの世界のシステムは随分と個性的なようだ。


まるで人間みたいだ。


だから俺はこいつの事をこう呼ぼうと思う。


「俺はお前のことシステマって呼ぶよ。んでさ、システマはさひょっとして姿を見せたり、とかってのは出来ないわけ?」


【私に戦闘能力はありません。あくまでプレイヤーの皆様のためのサポートシステムでございます。戦闘能力はありませんが、それでも良ければこういうことは可能です】


ブゥン。

俺の横に音がして光を放ちながら何かが姿を現す。


そうして俺の横に現れたのは


「わん!」


犬だった。


犬が俺の横に立ってる。


ペタペタ歩いて俺の周りをくるくる回っている。


「なるほど、旅のお供しては申し分ないな。犬はいいものである」


俺はそう呟いて黒い道を歩いていくのだった。



【補足】

システマが旅のお供をしてくれるのは天音だけです。他の人間のシステムちゃん無機質です

更に天音はゲーム世界行きが他の人間より実は一日早いという設定があります


この先しばらく説明することもなさそうなので補足として書いておきます

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