第33話 佐川と山田、ブラックギルドに就職してしまう「下水道でネズミ駆除をしてもらおうw」 追放者視点

「剣聖の俺が来てやったぞ! ありがたく思えっ!」

「賢者のあたしにふさわしい仕事をさせなさいっ!」


 啖呵を切ってオチブレロを出て行った、佐川と山田だが、


 結局、オチブレロに来てしまう。


 今も【上から目線】の二人に、


 大きなため息をつく、ギルマスの黒田。


「はあ……とりあえず、1年間は試用期間だから」

「い、一年間もっ!」

「長すぎよっ!」

「ウチの決まりでね。あと、試用期間中は給料半分だから」

「「は、半分……っ!?」」


 二人の年俸は100万円。


 その半分は、50万円だ。


 つまり……1年間は年俸50万円になる。


「ふ、ふざけるな……っ! そんな給料でどうやって生活しろと?」

「そ、そうよ……! 最低賃金より下じゃないっ!」

「へっへっへ……っ。探索者に最低賃金ないんだぜ。実力がすべてだからな」


 悪どい笑みを浮かべる黒田。


「気に入らないなら、いつでも辞めてくれていい」

「「ぐぬぬ……っ」」


 (クソ……っ! 足元見やがってっ!)

 (ブラックギルドのくせに……死になさいよっ!)


 オチブレロをやめたら、二人に行くところはない。


 ひとつあるとすれば、【オワコン】の栄光の剣に戻るくらいだ。


「俺たちの仕事は何だ? ボス討伐配信とか?」

「レアアイテムゲット配信とか、いいんじゃない?」


 しかし、二人に振られる仕事は、


 期待を大きく裏切るもので——


「下水道にいる、ビッグ・ラットの駆除だ」

「「な、なんだって……っ!」」

 

 二人が驚くのも、無理はない。


 たまにダンジョンから、下水道へビッグ・ラットが出て来る。


 普通、このビッグ・ラットの駆除は、F級探索者の中でもさらに底辺の探索者がやる仕事だ。


「あり得ないだろっ! 俺は剣聖だぞ? 剣聖にネズミ駆除をさせるつもりか?」

「あたしは賢者よっ! もっとあたしの力を活かせる仕事が……」

「おいおい。あんたらにはぴったりの仕事なんだぜ。実力から考えてw」


 呆れた調子で黒田は言う。


「ま、嫌ならクビってことになるなw」


 (舐めやがってっ! だがクビになるわけには……)

 (ハゲのくせにぃ……っ! でもクビになったら……)


「……わかった。せっかくだからサービスしてやるよ」

「そうねぇ……やってあげてもいいわよ?」


 余裕のあるフリをする二人だが、


 悪徳ギルマスの黒田には、全部バレバレで。


「くっくっく……そいつはありがてえな。じゃあ、さっそく下水道に潜ってくれ」

「おう。すぐに終わらせてやるよ」

「ビッグ・ラットなんて楽勝よっ!」


 ——しかし、二人は己の実力を勘違いしていた。


 最弱モンスターにも、苦戦することに。


 気づいた時には、もう遅い。

 



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