第27話 佐川と山田、転職活動に失敗する泣「お前らなど誰もほしくないわっ!」 追放者視点

 ——新見が裸の美少女と抱き合あっていた、一方その頃。

 

 佐川と山田は、転職活動に励んでいた。


 栄光の剣から配信エンジニアが【大量退職】することになり、


 自分たちも、【オワコン】の栄光の剣から脱出することにしたのだが——


【残念ながら不採用です。今後の活躍をお祈りしています】


「くそっ! またお祈りメールだっ!」

「あたしもよ……どうしてなのっ!」


 焦りまくる、佐川と山田。


 二人はいろいろなギルドの面接を受けるも、


 すべて【不採用】になり、【お祈りメール】が大量に届いていた。


 あまりに不採用が続いたせいか、


 二人は探索者転職ギルド【ダンジョン・エージェント(株)】に来ていた。


「俺たちは【剣聖】と【賢者】だぞ……っ! こんなのあり得ない……」

「そうよ! そうよ! 誰かの陰謀だわっ!」

「まあまあ……お二人とも、落ち着いてください」


 転職エージェントの佐藤が、二人をなだめる。


「うるせえっ! なんでダメなんだよっ!」

「あんたエージェントでしょ……っ! なんとかしなさいよおっ!」

「実は、低ランクの魔物に負け続けたせいで、ダンジョン協会がお二人の評価を下げました……」


「「な、なんだって……っ⁈」


「お二人は今までA級探索者でしたが、今は……」


「「い、今は……っ?」」


 (まあ剣聖の俺なら、下がってもB級ぐらいだ。B級より下はあり得ないっ!)


 (あたしは賢者よっ! 下がってもB級までよね!)


 しかし、二人は己を【過大評価】していた——




「……F級探索者だと、評価されています」


「「う、嘘だああああああああああああああ!!」」


 思わず、叫び出す二人。


「いえ、本当です……」


 佐藤は、二人にダンジョン協会の通知を見せる。


【栄光の剣の佐川と山田は、A級探索者からF級探索者に格下げとする。ダンジョン協会より】


「お、お前が捏造したんじゃ……?」

「そうよ! あたしたちを【格下げ】なんて、ぜっーたいあり得ないからっ!」

「本物の通知です。ここに、ダンジョン協会の【魔法印】があるでしょう」


 佐藤は、通知に押された魔法印を指差す。


 魔法印は、ダンジョン協会のS級魔術師が押した、偽造できないハンコだ。


「お二人は間違いなく【F級探索者】なのです」

「そんな……俺たちが【最底辺探索者】なんて……」

「信じられないわ……っ」


 現実逃避しまくる二人に、佐藤は話を続けて——


「お二人にぴったりのギルドがあります。F級探索者を多く採用しているギルド——【オチブレロ(株)】です」

「お、オチブレロだって……っ⁈ 超ブラックで有名なギルドだぞ!」

「絶対嫌よ! 他のギルドはないの……?」

「……残念ながら、オチブレロ以外にお二人に紹介できるギルドはありません。どこも採用を拒否してます」

「クソ! 絶対オチブレロには行かないからなっ!」

「もっとあたしたちを求めてるギルドが、きっとあるはずよ……っ!」


 ——しかし、佐川と山田を欲しがっているギルドは、オチブレロ以外になかった。


 二人の【破滅】が、静かに始まった……

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