第21話 【悲報】栄光の剣(株)、退職者が続出してしまう泣 「みんなやめないでくれええええええええっ!」 追放者視点

「郷田社長、大事なお話があります……」

「ど、どうした……? いきなり?」


 栄光の剣(株)の配信エンジニアたちが、社長室にやって来た。


「今月で、私たちはギルドを辞めます」

「な、なんだって……っ⁉︎」


 突然の退職宣言——


 郷田は焦り隠せず、お茶をこぼしそうになる。


「そんないきなり……今、我がギルドは大変な状況なんだぞ。急にキミたちに辞められたら……」


 配信エンジニアは、ダンジョン配信事業を行う上で必要不可欠な人材だ。


 配信用ドローンの操作や、配信サーバのメンテナンスを行う。


 もし配信エンジニアに辞められたら、ダンジョン配信そのものができなくなってしまう……!


「噂によると、郷田社長は新見さんをクビにしたそうですね? 本当ですか?」


 エンジニアリーダーの佐藤が、郷田に詰め寄る。


「ま、まあな……新見は【役立たずの無能】だと佐川と山田から聞いて……」


【おいおい、マジかよ】

【新見さんクビにするとかアホか】

【ガチで無能すぎる……】


 後ろのエンジニアたちがざわつく。


「あんな貴重な人材をクビにするなんて、経営者としてあり得ません。新見さんがいないせいで、栄光の剣のチャンネル登録者数は右肩下がりです」

「いや、それは……」


 現実を突きつけられ、口ごもる郷田。


「新見さんは本当にいい人でした。佐川や山田と違って、私たちエンジニアに、いつも優しかったです。あんないい人をクビにするなんて……もう郷田社長には着いていけません」


【新見さん親切だったよな】

【佐川と山田と違って、俺たちを見下さない人】

【新見さんに着いて行きたいぜっ!」


 佐川と山田は、ダンジョンに潜っている自分たちが一番エライと思い込み、配信エンジニアをぞんざいに扱っていた。


 特に、配信が伸びない時は、配信エンジニアに当たり散らしていたのだ。


「た、頼む……っ! 辞めないでくれっ! 今、キミたちに辞められたらウチは【崩壊】してしまう……っ」

「今更、もう遅いです——」

「ま、待ってくれっ! 新見をなんとか取り戻すから……っ!」

「本当に、新見さんを取り戻せるのですか?」

「本当だっ! 約束するっ!」


 (しまった……っ! 勢いで約束してしまった……)


「……わかりました。郷田社長がそこまで言うなら、今月中だけ待ちましょう。ただし、もし新見さんを取り戻せなかった時は……わかりますね?」


 (ぐぬぬっ……っ! エンジニア風情がイキりやがってっ! しかしここは我慢するしかない…… クソクソクソっ!」


 内心、毒づく郷田だが、


「……わかっている。絶対、新見を取り戻す」

「郷田社長、私たちを裏切らないでくださいね——」


 (どんな手を使っても、新見を取り戻せなければ……っ。マジでヤバいぞ……)



 ——この時、郷田はまだ気づいていなかった。


 破滅の運命を、もう変えられないことに……




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