レナ ~episode 15~
「うっわアイツまじかー。」
亮のことを報告すると、一樹くんは自分のことのように落ち込んでくれた。
「だから私、これからは全力で一樹くんの恋愛応援する!」
私が言うと、一樹くんが笑った。
「それは有難いけど、俺もなかなか難しいんだよなー。」
そう言ってテニスコートを数秒眺めた後、何かを閃いた様子で私を振り返った。
「玲奈ちゃんのお姉さん、手先器用なんだよね?一回さ、めっちゃ可愛くして学校来てみるのどう?アイツのことぎゃふんと言わせてやるの。うわ、俺はすぐ傍にいたこんな美少女に気づかずにいたのかーって、後悔させる。」
「後悔するかなー。」
私は笑った。美形を見慣れている亮が、今更私が可愛くしてってそんなことをちらりとも思うとは考えられなかった。
「一回、やってみようぜ。朝お姉さん忙しい?」
私は首を横に振る。
「明日は無理だけど、明々後日なら部活の朝練ないって言ってた。」
「じゃあちょうどいいじゃん!玲奈ちゃんの他の髪型見たことないし、玲奈ファンクラブのやつらも絶対喜ぶよ。」
「ないよ、そんなクラブ。」
私は笑いながら言った。真綾に言えば喜んでやってくれる。ちょっとそれもアリかな、なんて、私は少し思った。一日くらい、違う髪型してみるのも良いかもしれない。可愛い髪型にするとテンションが上がるし、亮はともかく、クラスメイトの反応も少し気になる。
「うーん、お姉ちゃんと相談してみる。」
私は言った。一樹くんが私に向かってグーサインを出す。
「明々後日、楽しみにしてるよ。」
私は胸が少しドキドキするのを感じた。確かに中学三年間、一回も別の髪型をしたことがないのは驚きだ。宿泊学習のときだってすぐに髪を結ってしまうし、誰にも髪を下ろしたところを見せたことがない。
予鈴が鳴って、私たちは席に戻った。席に着いて一樹くんと目が合い、にっこり微笑んだ。前を向くときに亮がこちらを見ているのに気が付く。私はその勢いのまま、亮にも微笑んだ。
亮が一瞬で目をそらす。メデューサじゃないんだから、と少し傷つく。私の顔が怖いのは、今に始まったことじゃないのに。
私はそんなことを考えながら、そっと自分の髪の毛に触れた。
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