生徒会室にて
ミユキはゆっくりと語り始める…そう、ミツオとの馴れ初めを。
「知っての通り、彼と私は陸上部の後輩、先輩の関係でした。」
ミツオ君、しっかり縦に首を振っています。
「「それが、何を間違ってミッ君の彼女発言に繋がるんですか?」」
マキとミキが身を乗り出してくる…。
「単刀直入に言えば、彼は私の命の恩人ということです。
…何ですか、その疑り深い顔は。」
ミユキの話に、半目で聞き入っているマキとミキ…おやおや、ミツオ君も心当たりが無いようで、こちらも不思議そうに小首を傾げています。
◇ ◇ ◇
その日…そう、インターハイの開幕を二週間後に控えた木曜日の午後、私は一般道から商店街を跨いで、一つ外れた筋を歩いていました。
脇を抜けるような隙間もなく、徐々に速度を上げてくるトラック。
(ハネられる!!)
歩いてきた道を戻る私…ある程度の速度で走りながら、逃げれそうな路地を探していると…私の方に走ってくる男子生徒、それがミツオ君でした。
「先輩っ!
こっちです。」
そう言って、細い路地へと私の手を引っ張られる。
(ここなら大丈夫…)
と思った刹那、壁を破壊しながら走ってくる2tトラック。
「くそっ!
先輩、急いで下さい!」
再び手を引っ張られる私と、懸命に逃げ込み先を探しているミツオ君。
しかし、突き当たりにあるのは、コンクリート壁が剥き出しとなっている人造湖…。
トラックは更に速度を上げて近づいてくる。
意を決したのか、私に視線を落とすミツオ君…私は頷くしか無かった。
「飛びますっ!」
ガードレールから人造湖へダイブするミツオ君、勿論私はお姫様抱っこ!
私達が中空に踊りだしたタイミングでトラックも人造湖へダイブする。
運転席からドライバーは飛び降りること無く、地面に激突大破したトラック…まぁ、運転席は潰れてはいませんでしたけど…。
さて、私達といえば…。
幸い私の身体に怪我は無かったものの
「先輩…大丈夫でした?」
ミツオ君の右腕はアサッテの方向に曲がっていたのです。
「受け身を間違えてしまいましたぁ…。」
青い顔で笑っているミツオ君。
「私は大丈夫よ…むしろ、貴方の方が…。」
「ああ、ご心配なく。」
私を身体から降ろすと、ゆっくりと立ち上がるミツオ君。
私も彼に続いて立ち上がる…打ち身などは有りそうですが、鈍痛などはありません。
「先輩、一先ず逃げましょう。」
彼は左手で私の右腕を掴むと出口に向けて早歩きを始めました…走るほどのバランスが取れないのでしょう。
「待ちなさい。」
私は彼の手を振り解き、スマホを取り出し父の事務所へ連絡を入れます。
「…はい、お願いします。」
私が話をしている最中、周りを警戒しているミツオ君。
今だにトラックからは運転手は出てきません…が、程なくして
どうやら、
「では、これで…。」
頭を下げると、彼は去って行きました…腕をそのままに。
SP達は落下したトラックの実況見分を済ませると、私を伴い帰宅しました。
◇ ◇ ◇
「えっ?
じゃぁ、あの時のギブスって…。」
マキが口を抑えミツオに視線を向けると
「ああ、この時の怪我…。」
ミツオはそう言って頷いた。
「そして、彼が陸上部を引退するきっかけになった…キズ。」
ミユキが俯く…が
「先輩、怪我と引退は関係ないですよ…。
もう、辞めようと思っていた時だったんです…きっかけと言えば、そうかもしれないけど…。」
そして、おもむろにマキとミキを交互に眺めるミツオ君。
「もう、オレは走る必要性を感じなくなったので…。」
ミツオの視線に気付いたのか、マキとミキがミツオの方に顔を向けると、三人が見つめ合う格好になり、全員が何故か赤面してしまう。
「あらあら、見せつけてくれるわね。」
ゆっくりと立ち上がるミユキ。
「それでも、ミツオを手放すつもりはなくてよ!」
扇子を正面に構えてみせるミユキ。
「それは、命の恩人に対する羨望からですか?」
マキが身を乗り出せば
「ミッ君のカッコ良さに惚れたの?」
ミキも身を乗り出してくる。
「当然の帰結ね。
でも、それだけじゃないわ。」
ミユキも身を乗り出してくる。
「ミツオは、私だけを見てくれたのよ。」
そう言ってミユキは微笑んだ。
「「「はぁ~?」」」
三人揃って右に首を傾げてしまう。
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【次回予告】
マキです!
ミキよぉ~!
せぇ~のぉ、マミでぇ~~~ぇすぅ!
次回は『生徒会室の三人娘』
私達が、ミッ君を…
手放すわけが、ないじゃない!
って、ミユキ先輩、何です?
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