スクールハウス

倉部改作

Prologue

 雨が降り続けている。

 大量の雨音のなかで、竹刀を携えた高校生が、剣道着を着た生徒達を従えている。高校生たちをひざまづかせている。そして、彼女は書類を握りしめている。


勇者「まさか生徒会が……ほんとにすべての予算を横領して。

   あげくスマホゲームに課金してたなんて……」

会長「なあ、だまっていてくれ。副会長さんよ。

   おれたちには、受験が……」

勇者「黙れ!」


 生徒会長は身を震わせる。竹刀を携えた高校生は言った。


勇者「あとの必要なことは、ぜんぶ……

   大人の前で話せばいい」




 別の場所。ますます暗くなってきた廊下。スーツの男と制服を着た高校生人間が対立している。


担任「(スマホを抱えたまま)まず人を思いやりなさい」


 高校生が拍手する。


??「さすが僕たちの担任の先生。生徒会の顧問なだけある」

担任「はやくどけ。急ぎの用事だ」

??「トイレならあちらですよ?」


 高校生は担任の後ろを指差す。


担任「用があるのは生徒会室だ!」

??「思いやりだったのに。時間です」


 スーツを着た人が続々とやってくる。


??「(肩をすくめて、)もうトイレにはいけないかも?」




 ますます暗くなってきた屋外の渡り廊下。雨は降り続けている。

 そこで勇者はふらふらと歩き、やがて座り込み、うずくまる。

 うずくまってからしばらく沈黙する。


勇者「みんないなくなっちゃった……みんな……」


 勇者が肩を震わせて泣き始めた時、ひとりの高校生がひょっこり顔を出す。


??「その、寒くないの……」


 勇者がゆっくりと顔をあげる。


勇者「だれ……」

??「僕は、そうだな……

   これから勇者の君とこの学校に仕える、王様、かな」

 

 title: School House

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