NOTALENT
奈川
第1話 門出
「たすけて」
家が燃え、村が燃えている中、私は、目の前いる魔法使いに出ない声を振り絞って言った。
「なぜ助けて欲しいんだい?」
なぜ、と聞かれても、私はそう言うしかできなかった。
「たす…けて」
なぜそんなことを言ったのだろう…。
僕は、騎士団所属のロシュ。
日々、町を悪人や、魔物から守るために努力している。
そして、今日は魔物討伐だ。
剣を構え、目の前のスライムに睨みつけ、
「うおおおおおおおおおおお!!!」
強烈な一撃を放った。
魔物討伐の任務も終了し、騎士団の拠点に戻ると、団長からの呼び出しがあった。
「団長命令だ。騎士団を辞めろ。」
「....」
「任務失敗回数32回、魔物討伐数2体、訓練成績最下位などが理由だ。」
「そして、先ほどの任務では一人で倒せて当たり前のスライムを倒すことができず、挙句の果てには体を乗っ取られ、お前を助けるために貴重な薬まで使うはめになった。」
「最近、村を襲う盗賊たちも出てきている。誰かを守れないお前では誰かを見殺しにしてしまう。」
「お前は騎士として才能がない。」
荷物をまとめ、重い足取りで門まで歩いていると
「おい、あいつ」
「あいつ騎士団追い出されたやつだろ」
「スライムにすら勝てないとか」
「え?どういうこと?剣を振れば倒せるのに?」
「なんで騎士団入ったんだよw」
僕は、ただ逃げるように走ることしかできなかった。
幼い頃、商人だった家族が馬車で移動中に盗賊に襲われ、殺された。
子供のときから、ある魔法使いの本を読み聞かせてもらうのが大好きだった。
盗賊に襲われたとき、薄れゆく意識の中でどうにか父さん、母さんを助けたくて、使えない本に出てきた魔法を口ずさんでいた。
そのあと、身寄りのない僕を村の人はやさしく迎え入れてくれた。
それから大切な人たちを失わないように、強くなることを決めた。
それから、頑張って働いて、働いて、金を貯めて、勉強して、ようやく入れた魔法学校も学力テストは満点だったけれど、魔法は使えなかった(なぜか、杖が反応しない、または、壊れる)し、それから、どうにか入った騎士団からも追い出された。
どうしようもない悔しさで涙がでる。
村に着くと、何か異変が起きている。
「門番のおっちゃんがいない」
「おかしい、あまりにも人が少なすぎる」
「家が荒らされてる!」
荒らされた村を走っていると、広場に村の人たちが捕まっているところ見つける。
「みんな!!」
助けに行く途中、盗賊と思われる一人が現れる。
「あぁ?まだ、村人が残って、、こいつ剣を持っていやがる」
剣を握り、盗賊に勢いよく切りかかる。
しかし、遅い剣は簡単によけられる。
「は?」盗賊びっくり
牢獄にぶち込まれる。
「ただの村人が剣なんて振り回してんじゃねーよ」
盗賊の頭が牢獄に現れる。
「お前!みんなを開放しろ!!」
「うるせぇ!」
顔を掴まれ、持ち上げられる。
「俺はなあ、ある物を探してここまで来た」
「知ってるかあ?伝説の魔法使いが作ったという最恐の対国兵器を」
「(兵器?)そんなもの知らない」
「け、そうかよ」
「つまんねえ、つまんねえ、もう皆殺しだな」
「待て!」
「心配すんな。俺はちゃんとした盗賊だ。お宝はひとつも残さず奪う」
「人の命は一番の宝ってなあw」
盗賊の頭が出ていく。
牢屋には誰もいなくなる。
「くそ!」何もできず、怒りに身をまかせて壁をたたたく
「え」
「うわああああああ」穴ができて落下してしまう
どこかの部屋に落ちる
「イテテ、何だここ」
「寒い」ガクガク
寒くて体をふるわせていると、ローブを見つける
「ロ、ローブだ」ガクガク
ローブを急いで体に巻く
「魔力を確認、魔力を補充します」
突然ローブが光り、機械声が聞こえてきた
「な、な、なに?!」
「一定量の魔力補充完了、人格を起動します」
「ふあ〜よく寝た〜」
「ローブがしゃべった?!」
あわてて、ローブを脱ぐとローブが立ち上がった
「君、誰?」
「ロ、ロシュです、、、」(ローブがしゃべってる、、、)
「私、ラユラよろしくね!」
「久々のお客様だ!紅茶紅茶淹れなきゃ!ケーキ、ケーキ🎵」
「ない?!」
何百年近く経っているので、ケーキは腐って粉々になった。
「まだ、紅茶はある!」
「ローブだから手がない!?」
そそくさと自分をもてなそうとするローブに警戒心はなくなっていた。
「手伝おうか?」
「ごめん、大丈夫、大丈夫だから寛いでて」
断られたが、どうするか悩んでいる様子だった。
「う~ん、ちょっと体借りるね」
「え」
ロシュの体にローブが覆いかぶさる。ローブが腕まで伸びて包帯を巻いているようになった。
「うお?!体が勝手に」
ロシュの体が乗っ取られたように動き始めた。
「ごめん、気にせずくつろいでて」
(くつろいでてと言われても…)
しかし、思ったよりも自分で動いている感覚がなく、ローブの中も居心地がよかった。
ラユラも俺の体で、紅茶を入れ始めている。
「火がない!」
「あのさ薪の方に手をかざして「ル・フレイア」って火が起こるイメージで言ってくれない?」
「え、いや僕、魔法使えないよ」
「いいから、いいから」
薪に手を向け、炎のイメージをし、魔法を唱える。
「ル・フレイア(火よ出ろ)」
ボォ
「え、火が付いた?!」
驚くことに、小さい火が付いた。と思ったら
ドカン!! 大きな爆発が起こる
「ケホ....」
驚きで、沈黙してしまう。
「ご、ごめん。マッチで火をつける魔法だったんだけど、魔力すごいね~それともイメージが良かったのかな、こんなに威力がでるとは」(怒らせちゃったかな…)
「すごい!!魔法を使えたの初めてだよ!!!」
「え」
「なんで僕使えたんだ!?」
「それはね、私、ローブに魔法陣が刻まれていて、魔力さえあれば、魔法を唱えると誰でも魔法を使えるんだ」
「すごい!誰がこんなすごいもの作ったんだ.........」
とりあえず、椅子に座り紅茶を飲みながらラユラの話を聞くことになった。
「私もともと人だったんだ」
「ある時、村が魔物の集団に襲われて、家族も殺され私も死んじゃいそうになっているところをある魔法使いが私の魂を魔法のローブに宿したんだ」
「それから、助けてくれた魔法使いに弟子入りしたんだ」
「けど、この体のせいか魔法はつかえなかったんだけどね」
「それでも毎日楽しかったよ」
「ここでいろいろ実験の手伝いしたり、魔物狩りしたり、剣術したり」
「だけど、突然魔法使いはいなくなった」
「探しにいこうと思ったけど、私は誰かに魔力を貰わないと動き続けれないし、待てばいつか帰ってくると思ってたんだ」
「それで、ずっとこの部屋に一人で魔力が切れるまで…」
ほこりだらけの室内はどれだけの時間が過ぎ去ったのか予想するのは簡単だった。
「だからこそ、今日はとっても楽しい日だったよ!」
うっすらラユラの顔が見れたような気がした。
「ラユラここから僕と一緒に出ないか?」
「え」
「ここから出て、魔法使いを探しに行こう」
「でも、」
「また、ただのローブみたいに、見つけてくれるのを待つの?」
少し沈黙
「僕にも大切な人がいた。その人たちを僕は守れなかった」
「だから強くなろうとした。けど、誰かを守れるほど強くはなれなかった」
「だけど、力がなくったて、大切なものは守りたいし、誰かを助けたい」
「僕は、大切な何かを、守るためには、どんなことでもしたい」
「ラユラは、自分にそれをできる力がなくたって諦めれるの?」
「諦めれないよ。なんでいなくなったのか、なんで何も言わなかったの、会って聞きたいことが山ほどある。」
「ロシュ、私を連れてって」
「ああ!!」
僕は、ラユラを身にまとい。この部屋からでることを決意した。
「だけど、その前に倒さなくちゃいけないやつがいる。力を貸してほしい」
「どんとこいだよ!」
そして外にでるため歩き出す。
「体が震えてる。大丈夫?」
「大丈夫」
「実は言ってなかったんだけど、私と契約しない限り、ロシュがさっき使った弱い魔法しか使えないんだよね」
「じゃあ契約を」
「契約はね、私に過剰な魔力を与え続けることを意味している。普通の人だと、魔力を吸い取られ過ぎて、干からびて死んじゃうんだ」
ここら辺で、ロシュからラユラに体の主導権が変わる。
「だから私が戦う」
「体は借りるけどね」
使われていない井戸の底に着く。
「魔法なしでどう戦うんだ?」
部屋にあった剣を取り出す。
井戸から飛び出し、屋根から突き破って、盗賊たちの前に出る。
「剣でだよ」
剣を大きく見せる。
「なんだこいつは!」
一瞬にして何人もの盗賊を倒す。
「魔法使いの弟子じゃなかったの」
「いやー日々魔法を使えないストレスで、剣ばっかり振り回してたり、魔物を片っ端から倒してたからねえ」
剣は正直さ
「おいおいなんだお前は」
盗賊の頭が現れる。
盗賊の頭と剣で交わる。
「お前さっきの?」
「力を隠してたのか?」
ラユラが強い一撃を与える。
酒樽の山に突っ込み、酒が全身にかかりびしょびしょになる盗賊の頭
「あーあ、酒がもったいねぇ」
顔から口に垂れてきた酒をぺろり
立ち上がる
「そのローブ、魔道具だろ」
たくさん攻撃を仕掛けてくるが、すべて防ぐラユラ。
「どこで手に入れたのやら?」
すべてを防ぐラユラ、圧倒するラユラ。
「諦めなさい。あんたじゃ私は切れないよ」
防ぐ。こいつローブの隙間からロシュの体を狙ってる?
「いやはや、大切な宝が傷つくのは嫌でな」
「魔道具を持ってるのはお前だけじゃねぇんだよ!」
「ウガリア(付き従え)」
盗賊の頭の腕に着いていたブレスレットが光りだす。
そして、さっき倒したはずの盗賊たちも光りだす。
「これは…」
さっき倒したはずの盗賊たちが、盗賊の頭の姿になって復活。
「さぁお宝を頂くとしよう!」
こいつら連携してくるし、守りが追い付かない。
「おいおいどうした、綺麗な剣筋が崩れてきてるぜ」
どんどん劣勢になっていく。
「まずい、このままじゃ、ラユラが」
ラユラと敵たちが戦っている中、捕まっていた村の子供が逃げようとする。
「おいおい、お前も俺になるか?」
「!?」
見つかる子供
「言うこと聞かない悪い子は死ね」
子供に向かって剣が振られる。
「ごめん、ラユラ…」
「ロシュ?!」
ロシュが体を動かし、子供を庇ったことで背中を斬られる。
「大丈夫か…?」
子供は驚いたようにロシュを見る。
「あーあ、大事な宝が」
「魔道具が強くても使用者が大したことねぇんじゃな!」
蹴り飛ばされるロシュ。
「契約して、ラユラ…」
「ロシュ…」
「僕は戦いたい!」
ローブに触れるロシュ。
「名前を読んで」
「私の名前を」
「力を貸してくれ!ラユラ!!」
ロシュの首元に人のラユラが抱き着く幻想が見える。
ローブが白く光りだし、美しいたくさんの魔法陣がローブに浮かび上がる。
「やはり、そのローブ、俺が求めた!!?」
ロシュの手には魔法の杖が出てくる。
「今度は二人でお前を倒す!」
敵が3人かかってくる。
「ル・ガレスタード(黒炎よ起これ)」
黒炎が三人を一瞬で焼き尽くす。
「なに!?なんだその魔法?!」
「すごい、頭の中にたくさんの魔法のイメージが流れてくる」
「ラユラ、左腕は任せて、他は任せた」
「うん!」
敵が二体かかってくる。一体はラユラが斬り、もう一体はラユラが攻撃から剣で受け、止まった敵をロシュが、
「グ・ガラッダー(雷よ鳴け)」
雷で真っ二つにする。
「なんだこいつら?!」
ラユラが剣を地面に刺し、ロシュは魔法をイメージする。
「いまだ、行け行け!!」
敵全員が固まって突っ込んでくる。
「オルガレオ・レイミリア(剣よ閃け)!」
たくさんの剣が生み出され、敵を剣で切りまくる。
全員倒した。
「!?」
「おいおい、忘れたか?それは死体なんだぜ」
死体を分身体に使っていたので、粉々にするまで動き続ける。
ロシュの体、周りを囲まれる。攻撃から身を守るラユラ。
「ル・ガレスタード(黒炎よ起これ)!」
周りを焼き尽くす。体の近くなので、少し弱めに使う。
「!?」
周りの敵すべてを焼き尽くしたと思ったその時、黒炎の中から剣が振り下ろされた。
そして、黒炎から、火傷だらけの盗賊の頭が現れた。
死体を壁にして、炎を防いだのか…
間一髪で、ラユラが剣で防ぐが、
バキ、パリン
ずっと放置された剣だったので、折れてしまう。
「そんなナマクラじゃ俺は倒せねぇよ!」
また剣が振り降ろされるが、杖でガードする。
しかし、杖も破壊されてしまう。
「魔法も剣も終わりだな!」
「いいや、まだとっておきの、感動があるよ!」
手を向け、炎のイメージをし、魔法を唱える。
「ル・フレイア(火よ出ろ)」
盗賊の頭の体が爆発し、体中が燃える。(先ほど酒樽につっこんで酒を浴びてるので)
「まだ、まだ…」
だけど、まだ倒しきれない。
ロシュの首めがけて剣を振り下ろされる。
「!?」
「ローブだけ?!」
斬ろうとするも、ローブだけでロシュがいない。
下から顎めがけてアッパーをかまし、炎に焼けながらも拳で殴って勝つ(このとき、殴るときローブの一部を腕に巻いている)
その後・・・・・・・・・
「よし、魔物が村に入れないように結界を張っておいたし、これで安心だ」
村の出口まで来ていた。
「お兄ちゃ~ん」
庇った子が近づいてくる。
「あの、助けてくれありがとう!」
「おう!」
「そうだ」
手のひらで氷の花を作ってあげる。
「はいどうぞ」
「ありがとう!」
手を振って別れ村からラユラの魔法使いを探す旅に出る。
「かっこいい魔法使いの才能あるんじゃない?」
「君も最恐の兵器なんかより、かっこいい剣士の方が似合ってる」
「さて、一緒に魔法使いを探しに行こう」
END
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