第9話 ケモミミたちは外に出たい
気は進まないが、いた仕方ない。
心配だけど鍵閉めときゃなんとかなるだろ、パパッと買い物行って帰って来れば……。
そう思ってカバンを手にしようとした時
「お出かけですか?」
チワが俺の肩をポンと叩いてそう声を掛ける。
その目はキラッキラと輝いていた、心なしか鼻息も荒い。
そういえば……今手に持った鞄、散歩の時にいつも持ち歩いてるやつだ。
それに反応したと言うことは……まさか……。
「買い物……というか散歩……行きたいのか……?」
その問いににっこり笑って頷くチワ、行きたいらしい。
でも、今日だけはそういうわけにもいかないし。
多分この四人の中で一番まともなのは彼女だ、買い物にダッシュで行くという計画は彼女が留守番して面倒を見ていて来れないと成り立たない。
「チワ、悪いけど今日は……」
「おそと!? ラビもいく!」
チワに散歩お断りをしようとすると、残念なことに会話が聞こえたラビが反応した。
彼女の目もまたキラッキラと輝かせ、ぴょんぴょんと飛び跳ねている。
……なんでこんなに行きたがるんだ。
こうなったら、外に行きたがらないように怖がらせるか……。
「あのな、外は危険がいっぱいだから連れて行くわけには」
「そんなことないよ! おそと、すんごくたのしいよ!」
お外が楽しい……?
おかしいな、ラビはウサギだから散歩のために外に連れてったりしてないはずなのに、そんなこと知ってるんだ?
「はこでね、ねてたらね、みんななでてくれるんだよ!」
外……?箱……?みんな……?なんのことだ?
ラビが外にいたのなんて拾ってきた……あぁ、段ボールのことか?
そういえばラビは姉さんが拾ってきたんだったな、おそらく公園あたりで捨てられてたんだろうな……近所の子供たちに触られたってことか。
そうだよな外出たいよな、ごめんなお家に閉じ込めて。
……でも、それとこれとは別だ。
行きたいからって理由で連れてくわけにもいかない……。
「まえみたいに、おそとで、ぴょんぴょんしたい!」
箱から抜け出して、公園でも駆け巡ってたんだろうか……。
なんかラビの話を聞いて想像したら、なんともいえない感情が込み上げてきた。
でも、負けられない、ここで負けたらこいつら連れて買い物だぞ……絶対体力もたない。
仕方ない、奥の手だ。
「お前らの気持ちはわかったけど、靴がないと外出られないぞ」
「これ、違うの?」
俺がなんとか諦めさせようとラビとチワを説得する横で、ミケは玄関にしゃがみ込んで靴箱の扉を思いっきり開く。
中には昨日までなかった小さな靴がいっぱいあった。
そういえば、こいつらが着てる服……全部いつも姉さんが着てた服だもんな。
と言うことは、服と靴を魔法でこいつらサイズに縮めたのか。
なんで服関係だけこんなに用意周到なんだよ……だったら食材も買っとけよ、これで連れていけない理由が無くなっちまったじゃないかよ。
「仕方ない……買い物連れてくか」
俺が渋々了承すると、チワとラビは両手を上げ『バンザーイ』といいながら喜んでいる。
とはいえ、ハルは連れてけないな……。
流石に抱っこ紐とかないし、この年齢では近くのスーパーまで歩くのもきついだろう。
……チワよりも不安が残るけど、ここはミケに留守番頼んでハル見ててもらうか。
「ミケ悪いんだけど……あれ?」
しかしミケは、玄関で靴を履きながら俺にこういった。
「何してんの? 行くんでしょ?」
ミケも外に行く気満々だった。
足をトントンしながら俺たちが出かける準備が整うのを待っている彼女。
乾杯である。全員でお出かけコ――ス不可避。
「お前ら、ちゃんと荷物持つの手伝えよ」
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