第14話 常識外ショッピング

「やめて! 非常識だから! これ食べたら本当怒られるから! メッ!」



「えー! 食べたい!」



「これ買ってやるから食うなら家で食え!今はダメだ!」



「なんで!やだー!!食べるう!!!」



 俺は人参を食べようとジタバタするラビを説得しながら必死で抑えていると、今度は ミケが俺にこんなことを要求してきた。



「ねえ、あたしちょっとフラフラしててもいい?」



「だめに決まってるだろ! 迷子になられたら困る!」



 これ以上面倒ごとが起きたら手に負えないと思った俺は、ミケにそう告げると大急ぎでカゴとカートを取りに行き、抱き抱えているハルをカートに乗せた後、空いてる片手でラビの腕を掴んだ。

 そして鞄から一枚メモを取り出すとチワにそれを渡す。



「チワ、そこに書いてある食材を探して持ってきて、このカゴに入れてくれないか?」



「かしこまりました、ご主人様」



「中身取り出したり、咥えたりするなよ、置いてあるものを、そのまま取って手で持ってくるだけだからな!」



 チワはそういうと、俺が肩にかけてるカバンから紙を取り出し走っていった。

 それを見ていたミケが意義を唱える。



「あの子はいいのに私はダメなの? 特別扱いとかずるいんだど」



 別行動を望んでいたミケにとって面白くないことは想像に難しくない。

 でもトラブルをこれ以上増やされては困る。



「悪いミケ、でも年長者のチワが適任だったし、勝手にふらついてるんじゃなくてお手伝いを……。って……あー! ハルダメだって! 耳とちゃんと隠せよ」



 ミケに説得している最中に、ハルは帽子に飽きてしまったらしく、脱ごうとしている瞬間を目撃してしまった。

 俺は帽子が取れないように、もう一度帽子をかぶせるとハルが帽子を脱ごうとするという押し問答が繰り返されていた。

 それを見たラビが疑問に思うのも無理はなかったのだろう。



「しゅじんさま、なんでぼうしとっちゃダメなの?」



 その質問に肩をガクッと落としたのは言うまでもないが、そういえば帽子をかぶらなきゃいけない理由をちゃんと説明してなかったな。

 納得しないと帽子かぶってくれないよな、子供にでもわかりやすい説明をするべきか。



「周りをよく見てみろ、他に耳が生えてる人間はいないだろ? もし、この耳が本物だと知られたら大騒ぎになるし、最悪、捕まって科学者が実験体にされるかもしれないんだぞ? そんなの嫌だろ?」



「じっけんたいって?」



 俺はまたもや肩をガックリと落とす。

 でも仕方がないことだ、科学者とか実験とか言ってもわかんないよな。

 危機感を感じてもらわないと、帽子またとっちゃうしな。

 動物にもわかる例えで、一番危機を感じる瞬間は……。



「ご主人様、お肉とってきました!」



 そんなことで頭を悩ませていると、肉の入ったパックを持ったチワが野菜コーナにいる俺たちの元に戻ってきた。

 それを見た俺はニヤリと笑う、そしてチワからそれを受け取るとラビに見せた。



「つまりだな……こうなって食べられちゃうんだよ」



「これなあに?」



「死んだ動物の肉」



 俺は忖度なく、残酷に一言でそう言ってやる。

 効果は覿面、ラビはパックの中の真っ赤な肉を見て体をビクッと震わせ硬直した。



「う……うごいてないよ、どうぶつさんのかたちでもないよ?」



「死んだ動物を切り刻んだ後だからな」



「ヒィッ!」



 さらに残酷な言い回しをしてやると、ラビは体を小刻みにプルプルと振るわせる。

 言ってるこっちとしても気分がよくないし食欲は無くなるのがデメリットではあるが、大人しくなっていくラビを見ると、作戦は間違っていなかったらしい。



「うさぎさんってバレると、ラビこうなっちゃうから、帽子とっちゃダメだぞ」



 ラビは涙目になりながら高速で何度も首を上下に振ると大人しくなった。

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