第15話 ヨム・キプール戦争

「大分、時間が空いたけれど、6日間戦争の結果、現代に至るイスラエルとパレスチナの構図が完成したわ」


 本当に大分空いてしまった。

 主として、作者がサボっていたのが原因だが。


「さて、現在、イスラム世界ではラマダンの月よ。この間は日中、断食しなければいけないと言われているわ」

『それなのにイスラエルは攻撃を仕掛けているわ。酷くない!?』

「2023年10月から始まったイスラエルとパレスチナの戦争は本格的な軍事活動としては1973年の第4次中東戦争以来と言われているわ。そして、この戦争はユダヤ教においてもっとも大切な日とされているヨム・キプールの日にアラブ側が先制攻撃をしかけたものよ」

『あら……』

「お互い様と言うわけでもないけれど、まあ、お互い様よね」


 どっちなんだよ。


「6日間戦争で広大な領土を失ったエジプトとシリアは、当然ながらこのままではいられないという思いがあったわ。取り返すまではできないまでも、せめて『俺達の領土を占領すると痛い目に遭うんだと分からせないといけない』と誓っていたの。一言で言えば殴られっぱなしでは終わらせない、ということね」

「アラブの中での地位も軽くなってしまうだろうからなぁ」


 ダメにしても、せめて「我々は名誉ある撤退をしたのだ」くらいの言い訳は欲しいということか。


「国民国家時代になって、一番厄介なのはこの部分よね。昔は、損得勘定でササッと戦争をやめられたのだけど、今は名誉なりメンツが出て来るし、トップの国内での面目もあるからやめたくてもやめられないのよね。だからまあ、ヨム・キプールの後は非政府軍が矢面に立つことになったわけだけど」


 なるほどねぇ。

 非政府組織なら国のメンツはかからないから、始めやすいし、やめやすいわけか。

「非政府組織だけに虐殺なんかやらかしても、責任を取らせにくいけどね。例えばイスラム国やらテロ組織のトップはことごとくが暗殺で死刑になった者はいないでしょ」

「そうだな……」


「とにかく、エジプトとシリアは反撃を決意していたわ。一方のイスラエルはというと」

『というと……? モサドが暗躍していたとか?』

「モサドは暗躍していたけど、『エジプトもシリアも俺達に仕掛ける力はないし、仮にそんなつもりになったとしても俺達の諜報力ならすぐに分かるぜ』と相手を舐めまくっていたのよ」

『全然ダメじゃん』

「結果として、イスラエル官邸が『あいつら今日の夕方には攻め込んでくるってよ』と理解したのは当日の午前中だったらしいわ。ということで、緒戦は準備していないイスラエルがコテンパンにやられるわけ。で、最終的には引き分けくらいなのだけど、この最初の鮮やかさのせいでヨム・キプール戦争の評価は、アラブ側には上々、一方のイスラエルは言い訳が多いものとなっているわ」

「野球で言うなら初回に5点取って、見事だったって感じかね?」

「でも、野球で言うなら最終スコアは10-11くらいでイスラエルの勝利なんだけどね。それについては次回で説明するわ。また1か月後かもしれないけど」

「おーい」


「あと、本来なら既にテロ組織なども出て来ていて、時系列的にはそちらが先になるべきなんだけど、最初に書いたようにラマダン中ということもあるから、ヨム・キプール戦争を先に持ってきたわ」

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