第9話 両国の歴史・第一次中東戦争
「第二次世界大戦が終わると、イギリスはパレスチナの管理を諦めて、これを国連に委ねることにしたわ」
『無責任ー』
確かに。
ただ、イギリスはもう世界帝国から完全に脱落していて、とてもではないがパレスチナの管理ができる状況じゃなかったからな。
「で、段階を踏んで撤退することにしたのだけど、この時点でイギリスが考えているのは『イギリス軍が平穏に撤退すること』だったから、またまたアラブ側にもユダヤ側にもいい加減な態度をとることになったわけ」
「それでますます嫌われたわけか」
「そういうことよ。既に両方に『俺達はイギリスに裏切られた』という思いがあるからね。良かれと思って仲裁に乗り出したら、どちらからも嫌われてしまった。よくあることだわ」
「どちらもイギリスを信用していないから、撤退する段階からユダヤ対アラブの戦いは始まっていたわ。一応、国際社会的にはイギリスが国連に投げかけて、解決を諮ることになったけど、両者にその気はないわ」
この構図も今と似ているかもしれないな~。
イスラエルもハマスも国際社会に言うだけは言うけれど、お互い返事に従う気は全くないからな。
「ただし、準備段階でもユダヤ側が圧勝していたわね。そもそも、アラブ側にはパレスチナにどういう国を作るかというコンセンサスがなかったの。周辺国はパレスチナのアラブ人が偉そうに発言することを認めなかったし、ハッジ・アミン・アルフセイニに代表されるようにパレスチナに関わり合いのある指導者は大体国外の安全なところから指導しようとしていたの。対してイスラエルは西側に近い国家構想を有して、指導体制も決まりつつあったわ」
これもまた今でも続く、周辺国はイスラエルを批判するけれども、自分達は何もしないし、難民も受け入れようとしないというわけか。
「周辺国にとっても、一番大切なのは自分達の体制維持だからね。パレスチナを支援する余裕なんかないし、虎の子の軍を派遣するつもりはないわ。派遣して自分のところで反乱が起きたらどうするの?」
『でも、第一次中東戦争はイスラエル対アラブなのよね?』
「結果的には、ね。今言ったように、それぞれの国は自分の軍を派遣することにデメリットしか感じていないけれど、完全に無視することもできないわ。だから、アラブ解放軍とかアラブ義勇軍といった軍を組織させたのよ。こんなことをするからアラブ社会はどんどん分裂していく、とも言えるかもね」
確かに……
「これらの軍隊はそれなりの数になったのだけど、得体のしれない軍隊だけにユダヤ社会に危機感を与えたのよね」
「あ~、正規軍ではないから、国際法が通用しない相手と思ったわけだな」
「元々どちらも国際法を守る気はないけどね。とにかく、こうした軍隊の組織をユダヤ側は深刻に受け止めたわけ。今でも一部言っているけれど、アラブ側は『ユダヤを絶滅させる』とか言っていたからね。ユダヤ側は危機感を抱いて一致団結したわけ。これに対してアラブ側はというと、体勢は整ったけど戦争の目的も希望も曖昧なままだったのよ。こんな両者がぶつかったのが第一次中東戦争と呼ばれるものなの」
アラブ側は数だけ多くても勝つ見込みはないなぁ。
「それでもユダヤ側の準備も完全には間に合わなくて、最初だけはアラブ側が有利だったわ。だけど、一週間停戦した間に間に合わせて、以降はユダヤ側がアラブを一方的に叩きのめす結果となったの」
現代の停戦はもっぱらパレスチナのためのものだが、この時はイスラエルのためになったわけか。
「これによってイスラエルの建国は確定的なものとなったわけね」
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