第48話 労働
二階堂 明だ。
火種の黒化騒動から、はや一ヶ月が過ぎた。
そんなに時間が経ったのかという人も居るかもしれないが、私とていつも魔法少女達を助けているわけではない。時々、本当に時々助けに行くだけなのである。
追加戦士ではなく、スポット的に助けに行く戦士枠と思っていただきたい。
ゆえに普段はレストランで給仕をしながら、日々鍛錬の日々を過ごしているわけだ。
今日も今日とて給仕服に身を包み日銭を稼ぐ。
「いらっしゃいませ‼」
お客様が来れば元気良く挨拶。それが私のモットーである。
「師匠、こんにちは。」
……また来やがった。最近は毎日の様に火種の奴が私のファミレスにご飯を食べに来る。家で一人で食べるのが味気ないというのが理由のようだが、それにしたって毎日この店に食べに来なくてもいいだろ。
「お客様、一名様ですね。あちらの窓際の席にお座りください。」
「師匠の塩対応‼ありがとうございます‼」
何がありがとうだ。お礼を言われる筋合いはない。
とりあえず火種をスマートに窓際の席に追いやり、いつものチキンドリアとざる蕎麦の注文を取った。
あとは火種が変な行動を取らないか見張っておかないと。
この間は態度の悪い客の胸ぐらを掴んで天井に叩きつけようとしていたからな。弟子を不用意に強くするのも考えものである。
しかしながら、火種はテーブルに一枚の紙を置いて、その紙を眺めて元気の無さそうな顔をしている。元気が無いのは私にとっては好都合だが、元気だけが取り柄のアイツの元気が無いのは、いささか気になるところである。
「お客様、チキンドリアとざる蕎麦をお持ちしました」
「あっ、し、師匠。ありがとうございます」
給仕の時に紙の内容を盗み見しようとしたが、火種の奴が急いで紙をクシャクシャに丸めてスカートのポケットに入れてしまったので、それは叶わなかった。
こうなってくると気になるものだが、他人の物を勝手に奪ってはいけないと二階堂流 の心得にも……というか一般常識的にも駄目なので、ここはグッと堪えることにしよう。最近、弟子との距離感も近くなり過ぎている気もするしな。
「1280円になります」
「あっ、師匠ちょうどあります」
会計の時も私は敬語の塩対応を貫き、火種も過度の触れ合いをしようとしてこなかった。そうして彼女が帰る際、スカートのポケットからポロリと先程の丸めた紙を落したのである。
「あっ、おい」
私の声に気付かずに店の外に出てしまった火種。言って呼び止めることも出来たが、このチャンスを逃す手はあるまい。
私は紙を広げて、紙に何が書かれているか呼んでしまうことにした。
そして、そこには恐るべき内容が書かれていたのである。
次回に続く。
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