第43話 酒飲み観戦

 よっ、俺チャガマ。

 今回、火種の奴が闇落ちっぽいことになってるので、師匠である二階堂 明を呼んで事態を収拾させることにしたんだ。

 はたして二階堂は火種を闇落ちから救うことが出来るのか?乞うご期待。


「師匠、こうやって師匠と拳を交える日が来ることを私ずっと望んでました」


「ほぉ、そうか。私はお前みたいな未熟者とは一切戦いたくないんだがな。喋ってないで掛かって来い。このバカ弟子が」


「はい、その豊満なお胸をお借りします♪」


 そう言って火種は突っ込んで行く、しかし黒くなって格段に魔法力が上がっているな。闇落ちするとパワーアップする原理は未だ解明されていないが、多々単純な戦力増強としては良いのかもしれん。まぁ、その力を制御で来ている場合に限るが。


「爆炎パンチ・廻‼」


 いきなり必殺技をぶち込もうとする火種。さて二階堂はどう出るかな?


「二階堂流活人拳・火車回転受け‼」


 二階堂はそう言って火種の拳を両手で受けると、火種の拳の回転と逆の回転をかけて火種を上空に吹っ飛ばした。

 いとも簡単に弟子の改良された必殺技を破った二階堂は、そのまま空中の弟子に向かって飛んで行く。まるで弾道ミサイルの様である。


「二階堂流活人拳・岩壁粉砕頭突き‼」


 無防備の火種の腹にドガッと頭突きを入れる二階堂。毎回思うけど魔法少女の戦いっぽく無いよな。もっとキラキラしたものを出すのが魔法少女としての醍醐味だろうに、これではドラゴン〇ールである。


「がはっ‼」


 腹に良いのを一発喰らい、ヒューッと地面に落ちて行く火種。そしてそのまま地面にズサッと突き刺さった。ギャグマンガかな?


“スタッ”


 何事も無かったかのように着地する二階堂。弟子が地面に突き刺さっても涼しい顔をしている。やはり鬼や、コイツは人の皮を被った鬼や。


「さ、流石の火種ちゃんもあんなの喰らったら気絶しましたかね?」


 俺の隣の雫がそんなことを言い始めた。こんなことを言い始める奴が居るってことは、まだまだ戦いは終わりそうにない。


「師匠‼今の頭突きは痛かったです‼」


 ズボッと地面から上半身を出しながらニコニコ笑っている火種。やっぱり精神的にヤバい様だ。これは流石に女児向けとはとても言えない。


「おえええええええ‼……し、師匠の攻撃を受けて吐くのは久しぶりです。出会った頃を思い出し……おぇ‼」


おぇおぇと吐しゃ物を吐き出しながら話す火種。完全に放送事故である。見せられないよ。


「吐くか喋るかどっちかにしろ。聞き取り辛い」


 弟子が吐いてても冷淡な態度のままの二階堂。まぁ仮に血を流していたとしても、この女は眉一つ動かさないだろうけどな。


「はぁはぁ、その塩対応、やっぱり最高です。師匠なら私の全力を受け止めてもらえそうです」


 火種の纏っていた黒いボウボウと炎が激しく燃え始めたので、どうやらここからが本番らしい。ありったけの力で二階堂に挑むようだ。

 普通ならこれでも二階堂には勝てないだろうが、今の二階堂は両腕を前の戦いで負傷している、だから防御以外で拳を振うことは出来ない筈である(ロッククライミングは出来るのにな)。

 それだけのハンデを持って今の火種と戦うとなると、これは勝負が分からなくなって来た。魔法少女の戦いを何十年も見守って来た俺が言うのだから間違いない。


「ふぅ、三度いっきまーーーーーーーす‼」


 ダンッと力強く地面を蹴って、先程より明らかに加速した速度で二階堂に接近する火種。

 今度は派手な必殺技を使わず、ただの右拳を二階堂の顔目掛けて飛ばす。

 それを二階堂はヒラリと避け、間髪入れずに火種の腹に右の膝蹴りをかまそうとする。


“ガッ‼”


 しかし、これを左腕でガードする火種。明らかに先程より成長していると言えるだろう。

 そうして右手の平を二階堂に向ける火種。


「ファイアーボール‼」


 火種の手の平から勢いよく飛び出した黒い火の玉が二階堂を襲う。てっきり肉弾戦だけかと思いきや、ここで魔法を使うことに驚きを隠せない。

 二階堂の体が燃え上がるが、燃えている二階堂は弟子を睨め付けるぐらい元気である。


「魔法を使えば私に勝てるとでも思っているのか?」


「やれることは何でもやるんです♪何せ相手は師匠ですから♪」


 地面に着地した火種は、黒く燃える師匠を見ながらニヤリと笑う。

はたしてこの後どうなってしまうのか?見当もつかないが、とりあえずワンカップの   酒でも飲みながら観戦するとするか。

 うぃ~~~。








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