第27話 三本の矢

雫 流子です。

バークマンとの戦闘になっていますが、この魔物、貯め込んだ夢エネルギーを使って厄介な敵になっているようです。


「このバークマン。再生能力だけが取り柄ではない。喰らえ‼」


そう言ってバークマンは両手のそれぞれを私達に向け、私の方に向けている左手からは高圧水流を、日ノ本さんの方に向けている右手からは火炎を吹きだたせて、それらは私たち目掛けて飛んできます。

スピード的には大したことないので難なく避けることが出来ましたが、それでも二つの魔法を同時に使うなんて、そこで二階堂さんと凄まじい戦いを繰り広げている大神さんに酷似しています。


「どうだ見たか‼夢エネルギーを魔法に変換させることにより、二つの魔法を同時に使うことが可能なのだ‼・・・まぁ、二つの魔法を合わせるなんて難しいことは出来ないが・・・だが俺が強いことに変わりはない‼」


今一瞬、バークマンが本音をポロリしましたね。軽く大神さんに劣等感を抱いているのかもしれません。

でも確かに厄介な敵ですね。夢エネルギーというのが他にどんな力が使えるのか分かりませんし、これは気を付けて戦わないといけないかと思います。


「バークマン‼人の夢の力を使って偉そうに‼自分の力で敵に打ち勝とうとは思わないんですか‼」


バークマンにそう言い返す日ノ本さん。前はそんなことしなかったのに、これも二階堂さんの影響ですね。


「思わんね。俺は人の夢エネルギーを使って戦うように作られた魔物だ。そのように戦って何が悪い?」


「えっ?・・・あぁ、そういう風にしか戦えないなら仕方ないかもですね。すいませんでした。」


秒で論破されてる。日ノ本さんは口喧嘩はメチャクチャ弱いみたいです。素直ですからね。

と、敵とトークに花を咲かせている場合ではありません。今日は二人で戦わないといけないんですから、連携をしっかりして戦いに挑まないとですね。


「日ノ本さん、私が弓で援護しますから。思う存分アタッカーとして近接戦闘お願いします。」


「分かったよ流子ちゃん‼」


“ダッ‼”


地面をけり上げてバークマンに向かって飛んで行く日ノ本さん。普段鍛えているだけあって身体能力は私達の中でも段違いに成長していますね。


「ふん‼返り討ちにしてくれる‼」


バークマンは突然右手を巨大化させ、向かって来る日ノ本さんを殴りつけようとしています。

すかさず私は弓を引いて、アクアアローを日ノ本さんには当たらない様にしてバークマンの右手に飛ばしますが、今度は突然バークマンの体がメタリック使用の様にテカテカになり、右手に当たった矢はカーンと弾かれてしまいました。

どうやら硬質化させて防御力を上げたようです。


「日ノ本さん逃げて‼」


私は叫びましたが、日ノ本さんは逃げる様子は全くありません。ただ眼前の敵に向かって前進あるのみです。


「血迷ったか死ねぇ‼」


“ゴォォォォオオオオン‼”


巨大化して硬質化したバークマンの拳が日ノ本さんの体に炸裂して、除夜の鐘の様な大きな音が河川敷に響き渡りました。

これは日ノ本さんが大ダメージを受けてしまったと私は心配になりましたが、当の本人はと言うと。


「コアの場所が分かりました。右胸より少し上の所ですね。」


とバークマンの拳が当たっているのに痛がりもせずにニヤリと笑ったのです。これには流石に私も恐怖を覚えましたが、敵であるバークマンの方は私なんか比じゃ無いほど怯えています。


「な、何なんだお前は⁉」


「二階堂流活人拳、心得一つ‼やられたらやり返せ‼」


バークマンの問いに応答せずに日ノ本さんは右手を構えます。ですが拳を握り込むのではなく、人差し指、中指、薬指の三本を突き出すように構えています。


「私は一本ではまだ無理だから・・・三本の矢ならぬ三本の指で・・・更にそこに回転を加えて。」


何やらブツブツ言い終わると、右手をバークマンの右胸の上の方に放ちました。回転させながら三本の指に炎を纏わせた一撃はバークマンにヒットし。


“ズガンッ‼”


見事バークマンの硬質化された体を貫きました。私は冷静を装っていますが、私の矢をいとも簡単に防いだバークマンの体を、これまたいとも簡単に貫いた日ノ本さんを見て、完全にドン引きしています。


「がぁあああ‼コアがぁあ‼ぎゃあああああああああああ‼」


コアをやられて断末魔を上げながら体を霧散させるバークマン。これはバークマンの能力ではなく、ただ単純に夢を食べ続けた魔物の最後だったのでしょう。


「二階堂流活人拳派生 三点突破 焔螺旋とでも名付けようかな?」


そう言いながら自分の右手の三本の指に纏った炎をロウソクの火の様に息を吹きかけて消す日ノ本さん。

そんな彼女を見て皮肉交じりに私はボソッと本音をこぼしました。


「もうアナタ一人で良いんじゃないですか?」








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