第11話
勝ち残った男は、名をハクライといった。王が言うには喰族と鬼族の両方の血を引く男で、下手をしたら自分よりも強いのだと言う。王がはじめに言っていた通り、今回の殺戮で生き残った彼は、ミズミ同様闇族王の権限を与えられ、いうなれば彼と同じ王族として、この城に迎えられることになった。
――のだが……。
「俺、王様って柄じゃないし……そうだな、ミズミの側近ってことでどうかな?」
ミズミ同様王として対応すべきか迷ったカラスが尋ねれば、男はそう言って無邪気に微笑んだ。
「お前がそれでいいなら俺は構わんが……いいのか、お前だって王になってやりたいことがあったんじゃないのか?」
友を心配するような口調で茶髪の美青年が問えば、黒髪の男は静かに首を振った。
「俺、今はミズミのやりたいことを応援したいから。だから俺は側近でいい。もしくは相棒」
そう言って笑う男は、その体格、見た目、年の割に無邪気な笑みを見せる。その屈託ない笑顔に王もそれ以上言う気をなくしたのか、ため息一つ挟んで男の申し出を受け入れた。
「わかった。ではハクライ、お前は今日から俺の側近だ。よろしく頼むぞ相棒」
その言葉に、嬉しそうに口には笑みを浮かべ王を見つめる男は、その切れ長の瞳に強い光を宿していた。それは彼の決心の表れでもあった。
「ん。よろしく、ミズミ」
そんなわけで、この邪悪な闇族王の城に、もう一人住人が増えたのであった。
翌日――カラスは困惑していた。
「はて……果たしてこれで良いのじゃろうか……」
もうこの闇族王の城に来て数日は経つのだが、相変わらずカラスは頭を悩ませてばかりだった。それもそのはず、王だけでも今までの王とは要望が全く違っていて、それに対処するだけでも精神をすり減らしていたのだ。それに加えて新しく城にやってきた王の側近も、なかなか予想外だったのである。
「食事、もう終わり? もう少し食べたい」
今までのどんな闇族王ですら満足させてきた闇烏の食事の準備を、新しい側近の男はあっという間に平らげ、お替りを要望してきたのである。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます