ヒストリアの知らない話
彼女は唐突に現れた。一人、また一人と死に絶えていく絶望の中。あまりにも眩しすぎる純白の御髪を靡かせて。その姿を始めてみた時、まるで女神が降臨したのかと思ったほどだ。
「終わったわよ。」
見れば見るほど、うら若い娘の姿にしか見えないのに、その鋭い眼光からは、死を連想させるほど凶暴な感情が浮かび上がってくる。
「本当に、あの、災厄をやったのか?」
「跡形も残ってないよ。」
彼女に願ったのは、この国を滅ぼした龍の討伐だった。それを、彼女はたった一日で成し遂げてしまった。何万人という軍隊を一夜にして壊滅させたあの龍を。
「次は、母親の方だね。何度も言っておくけど、こっちの方は、うまくいく保証はないよ。それでもやるのね?」
「・・・ああ。この国の無念を、最後の希望にかける。」
「希望か、単なるエゴか・・・。」
私は、彼女と出会って、救われてなどいない。もっと早くに、彼女に出会っていれば、彼女はこの国を救ってくれただろうかと、思わずにいられない。しかし、それは、考えても仕方がないことだ。この国に残されたものは何もない。私の命ですら、じきになくなる。だから、せめて生まれてくる我が子の糧になれるなら、本望というものだ。
そうして、私は自分の命を彼女に差しだした。同胞たちの無念の魂と共に、あの子の命となれるなら・・・。
アカハネ伝承 アールラントニテ
龍ヲ討伐セシ、白髪ノ青年。魂ヲ用イテ、奇跡ヲ生ミ出ス____。
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